実際に問題を見てみると、数学ではイラスト付きで、100メートル走で最もタイムがよくなるストライド(1歩当たりの距離)と1秒当たりの歩数を求めさせたり、国語では出題された評論文の内容を整理した生徒のノートを埋めさせたりなどの新趣向があった。一方、プレテストで疑問の声が多くあがった、生徒会の部活動規約などの実用文は国語で出題されなかった。数学も、疑問視された太郎さんと花子さんの会話形式の問題は抑制された。こうしたなか、共通テスト色を最も際立たせたのが英語だ。

■実用英語に賛否の声

 リーディングでは、発音や語句整序の問題はなくなり全て読解問題になった。総語数は約千語増え、受験生からは「時間が足りなかった」との声も聞かれた。ルームメイトの忘れ物をめぐるスマホでのメッセージのやりとりや、ファンクラブの入会、ウェブの情報をもとにした旅行プランの組み立て、アイスホッケーの安全対策の記事など内容は多岐にわたる。長文読解や複数資料の読み解き、事実と意見の識別などが求められた。

 この大きな転換に「実社会で必要な、生きた英語にシフトした」と評価する声がある一方、「必要とされるのは、読解力でなく情報処理力」「TOEICのテストみたい」「大学入学後に必要とされる英語と違う」など、疑問視する声が英語教育関係者を中心にあがり議論を呼んでいる。立教大学名誉教授の鳥飼玖美子さんは言う。

「共通テストは思考力を測ると言いながら、熟考型の受験生は思考力があっても十分に力が発揮できなかった可能性があります。脈絡なく大量のトピックを読まされ、知的な内容の英文がなかったのも問題です。リスニングはこれまでの2回読みに、1回読みが加わりましたが、日常のコミュニケーションでは聞き取れなかったら聞き返します。1回しか聞けないなんていうことはありません。顔の見えない4人の会話を声やアクセントだけで聞き分けさせる問題も乱暴。見直しが必要です」

(編集部・石田かおる)

AERA 2021年2月1日号より抜粋