受験生の座席の間隔を空けるなど、コロナの感染対策が施されるなか第1回共通テストは実施された/1月16日、東京都文京区の東京大学 (c)朝日新聞社
受験生の座席の間隔を空けるなど、コロナの感染対策が施されるなか第1回共通テストは実施された/1月16日、東京都文京区の東京大学 (c)朝日新聞社
AERA 2021年2月1日号より
AERA 2021年2月1日号より

 センター試験に代わって、今年初めて実施された大学入学共通テスト。その出題内容に加え、コロナ禍のなかどう実施するのかも注目された。AERA 2021年2月1日号では、専門家たちがその中身を検証した。

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 愛知県に住む松永大翔(ひろと)さん(19)の第1志望は京都大学だ。1年浪人して今年2度目の受験に挑む。昨年は大学入試センター試験を、そして今月16、17日には第1回となる大学入学共通テストを受験した。松永さんは言う。

「共通テストの試行調査(プレテスト)を解いたときには、こんな問題で思考力は測れないのではと思いましたが、本番では考えさせられる問題が思いのほか多かったです」

 31年続いたセンター試験に代わり、今年から共通テストに切り替わった。松永さんが受けた第1日程は約53万人が志願。今年は新型コロナウイルスによる学習の遅れに配慮して、現役生には30、31日の第2日程も組まれ、約700人が出願した。

■平均点は変わらない

 共通テストへの移行の狙いは、センター試験の良問の蓄積を受け継ぎつつ、「思考力、判断力、表現力」の測定のより一層の重視だ。大学入試センターは2017、18年にプレテストを実施。その後、共通テストの目玉とされてきた英語民間試験と国語・数学の記述式問題が見送られたが、変更を受けたプレテストやサンプルテストの提示はなかった。このため、本番を迎えるまでどのような試験内容になるのか計り知れない部分があった。松永さんは言う。

「プレテストに比べ、国語と数学はセンター試験に戻った感じがしました。数学はプレテストの平均点が低すぎたので、簡単になるだろうと予測されていましたが、昨年のセンター試験のほうが共通テストっぽかった気がします。驚いたのは英語です。プレテストとも予備校の模試とも違いました」

 駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんは次のように見る。

「共通テストは、共通一次、センター試験と約40年続いてきた試験を大きく転換させるものになりました。思考力、判断力の測定により重きをおき、実社会で使える力を測ろうとする意図が鮮明に打ち出されました。テスト終了直後は、センター試験より難化したという見方が多かったですが、生徒たちの反応は違いました。実際、平均点もあまり変わりません。上位層はもともと十分な思考力がなければ、個別試験に太刀打ちできません。知識問題が減った分、ミスが少なくなり、得点を伸ばしたようです。逆に、プレテストのパターン学習を繰り返した受験生は時間が足りなくきつかったと思います」

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