■早くも「撤退」見越す声

「どうNTTと戦うか。これは我々の歴史だ」

 KDDIの高橋誠社長は13日の新料金プラン発表会で、昨年12月にNTTドコモが発表した新プラン「ahamo(アハモ)」への対抗心をむき出しにした。この結果、「5分以内の定額通話と20GBのデータ通信で税別2980円」で、既存3社が実質横並びとなった。

 楽天モバイル幹部は「3社が値下げしたのはうちに合わせたのが根底にあるはずなのに」と、既存3社からまだ相手にされていないと感じている。確かに楽天モバイルは昨年4月から通信量無制限で2980円のプランを既存3社に先駆けて提供しているが、基地局の人口カバー率は今夏までに96%を目指すという段階で、通信環境の面では心もとない。
 その分、3社にはない安い料金で契約者を稼ぐ作戦だったわけだが、既存3社の値下げでそれも瓦解したといえる。3月に3社の新プランが始まる前に、楽天モバイルは新たな値下げに踏み切らざるを得ない状況だ。

 基地局整備に関する秘密情報は、本当に楽天の事業に必要な情報ではなかったのか。もしも事件発覚で目標の基地局整備が遅れるようなことがあれば「安かろう悪かろう」のイメージが定着し、事件で悪化した評判が更に悪化しかねない。

 楽天モバイル幹部は「コツコツと実績を積み上げるしかない」とつぶやくが、通信業界関係者からは早くも、「携帯電話事業を手放すなら早いほうがいい」と、楽天の早期撤退を見越す冷めた声も聞かれている。(ライター・平土令)

AERA 2021年1月25日号