「恋愛小説じゃなかった」コロナ禍とオリンピック間近の東京を背景に描く“すべてを捨てていく物語” (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「恋愛小説じゃなかった」コロナ禍とオリンピック間近の東京を背景に描く“すべてを捨てていく物語”

濱野奈美子AERA#読書
島本理生(しまもと・りお)/1983年、東京都生まれ。高校在学中に『シルエット』で群像新人文学賞の優秀作を受けデビュー。『Red』で島清恋愛文学賞、『ファーストラヴ』で直木賞受賞(撮影/写真部・松永卓也)

島本理生(しまもと・りお)/1983年、東京都生まれ。高校在学中に『シルエット』で群像新人文学賞の優秀作を受けデビュー。『Red』で島清恋愛文学賞、『ファーストラヴ』で直木賞受賞(撮影/写真部・松永卓也)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。

ワインバーを営んでいた母が突然、事故死してしまった主人公・前原葵。小説『2020年の恋人たち』で描かれるのは、店を継ぐかどうかの選択を迫られる彼女と、それを取り巻く男性たちの2020年まで、そして2020年の日々だ。著者の島本理生さんに、同著に込めた思いを聞いた。

*  *  *
 もともと「2020年までの恋人たち」というタイトルで17年6月から連載されていた島本理生さん(37)の新作小説。当初は、生まれも育ちも東京である島本さんの「自分が見てきた東京と、オリンピックに向けて変わっていく東京を残しておきたい」という思いからの着想だったという。固有名詞とともに詳細にスケッチされる東京を背景に、母子家庭で育った主人公・葵が母を失い、母の残したワインバーを継いでオープンさせる。その過程で出会った男性たちと恋をし、別れ、自分を獲得していく物語。連載は19年の初めに終了し、その時点では20年のことは書かれていなかった。

「連載時には主人公を含めた女性の登場人物たちの気持ちが十分につかみきれなかったという心残りがありました。それで結局、頭から書き直してみたんです。車を全部解体して、一つひとつの部品を点検して、もう一度組み立てるようなことをして、時間がかかりましたが、それからこの小説に向き合う面白さが見えてきました」

 島本さん自身、最初はこの小説は恋愛小説なのだと思っていた。しかし、再び組み上げてみるとまるで違うものが見えたという。

「全然そういう話じゃなかったんです。知らず知らずのうちに押し付けられていた不要なものや終わった恋愛だとか、すべて捨てていく話だったんです。連載時にはまだいろいろつかんでしまっていたものを、後半は特に、どんどん手放していくという流れを意識しました」


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