「みんなのフィッティングルーム」と名づけたが、発案者の須藤修二さん曰く、利用者の多くが「私のフィッティングルームだ」と言って喜ぶという(撮影/編集部・深澤友紀)
「みんなのフィッティングルーム」と名づけたが、発案者の須藤修二さん曰く、利用者の多くが「私のフィッティングルームだ」と言って喜ぶという(撮影/編集部・深澤友紀)
マルイでは幅広いサイズを用意。スーツのパンツは、ウエスト52センチから151センチまで対応している(撮影/編集部・深澤友紀)
マルイでは幅広いサイズを用意。スーツのパンツは、ウエスト52センチから151センチまで対応している(撮影/編集部・深澤友紀)

 SDGsや多様性の波は、ファッション業界にも押し寄せている。丸井グループもその一例だ。障害がある人にも利用しやすい試着室の設置、幅広いサイズの女性靴を展開している。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号の記事を紹介。

【写真】マルイでは幅広いサイズを用意

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 丸井グループは当事者の声を拾い、19年5月、有楽町マルイにすべての人が使いやすい「みんなのフィッティングルーム」をつくった。障害がある人は本来、購入前の試着が重要だ。手足にまひがあっても着脱できるか、車いすユーザーなら肩回りや腕は動きやすいかといった点を確認する必要がある。だが、障害のある人の多くが試着をせずに購入する。大きな理由が、試着室が利用しにくいからだ。

 そこで「みんなの~」は、通常の試着室の3倍ほどの空間をとり、車いすのままで利用でき、付き添いの人も一緒に入れるようにした。手すりもつけ、耳の聞こえない人が利用する筆談ボードや、弱視の人のために照明の明るさや色を変えられるスイッチ、座って着替えるためのソファも用意した。この広い試着室を二つも設置。試着に時間がかかっても、気兼ねなく利用してもらいたいからだという。

■意識の変化を生む場に

 この試着室は、「みんなのオーダー by VISARUNO」のショップマネージャー、須藤修二さん(44)が一人の車いすの男子高校生に出会ったことが発案のきっかけだという。卒業式に着るオーダースーツを作りに母親と来店。試着室に案内すると、段差があり、狭くて車いすでは身動きが取れなかった。須藤さんが謝ると、その子は「いつもこうなんでいいですよ。僕らはどうせ対象に入っていないから」とあきらめたように言った。

「ダイバーシティ&インクルージョンを掲げるマルイが、未来ある若者にあきらめさせてしまったことがすごく悔しくて。みんなが使いやすい試着室を作らなければと思った」(須藤さん)

 広い試着室を作るには売り場を一部縮小しなければならない。社内でも反対者がいたが、須藤さんは丁寧に議論を重ねて仲間を増やし実現にこぎつけた。

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