星:うん、ひとつは共通の価値観、もうひとつはファクトチェックだと思いますね。そういう意味では、米国のメディアも試行錯誤しながら学んでいる。トランプ大統領が会見で、大統領選で不正があったと発言し、3大ネットワークが根拠を示していない、などとして中継を途中でやめちゃったりね。
長野:あれは斬新でしたね。おお!と思いました。
星:NBCが会見の途中で、これは嘘です、って入れたり。
長野:ツイッター社も、トランプ大統領のツイートに、これは事実ではないと警告ラベルをつけたりね。
星:そうそう。それはメディアの大きなミッション(使命)だと思う。
長野:私は大手メディアがその役割を担っていくのかなと思っていたんですけど、さっき星さんが、人を流動化させていくという手もあるっておっしゃったじゃないですか。
星:日本では新聞が衰退して、テレビはお上に放送免許を抑え込まれ、SNSの広告がテレビやプリントメディアを上回ってきた。そうなると大手メディアといっても影響力が変わってくる。加えて、経営の問題もある。コロナで広告収入が下がって、調査報道をやめてしまう地方紙や地方局も出てきている。だから、メディアで調査報道をやる集団を非営利のNPOで作るというような、新しい形態で報道の質を高めていく未来が、そう遠くないうちにあると思うんです。
長野:そういうかたちが、どんどん必要になってきていますよね。
星:その代わり記者も職場をひとつに絞るのではなく、流動化する。1年くらい休職して大学で政策を勉強してまた現場に戻るとかね。
長野:この話が実現できれば、またジャーナリストが憧れられる時代になりますね。星さん、それやってください!(笑)
(文中一部敬称略)
(構成/編集部・伏見美雪)
※AERA 2020年12月7日号に加筆