星:そうですね、今は、政策的には厳しい選択を求めざるを得ない時代になっている。増税も必要だし、社会保障だって見直さなくてはいけない。そういうときに素人的なニュースばかりやっていると、税金の負担が増えるのは困りますよね、という井戸端会議的な話に終始することになる。とりあえずそれで目の前の数字は取れるかもしれないけど、長い目で見るとニュースは不都合な真実を伝えられなくなります。

長野:本当にそうですよね。

星:今テレビは、プリントメディアとネットメディアの挟み撃ちになっている。それぞれ別々にやっていくには限界がきていると思いますね。例えば新聞記者もテレビに出て話す、テレビの人も記事を書く、というように、人が流動化して、全体のレベルを上げていくしかないと思うんだよね。

長野:それはいいアイデアですね。最近はそもそも、ニュースが特定の人にしか届かなくなってきました。ネットではひとつの記事に反応すると、その記事に関連する情報ばかりあがってくる。自分にとって心地の良い情報だけに埋没していくというのでしょうか。情報のタコツボに入ってしまって、タコツボの外の情報はまったく見ない、という人が増えてきた。結果的に米国のように分断されて、情報格差が生まれてしまう。昔みたいに、テレビや新聞である程度ニュースを共有できる時代ではなくなってしまった。そういう時代に、ジャーナリズムって何ができるんでしょう?

●大手メディアの役割

星:分断化の傾向が元に戻るってことはあり得ないと思うんですね。同じ記事や番組を見て同じ話題が出るという状況はもはや望めない。だとしても、共通の価値観はあるはずです。人権だとか平和だとか民主主義だとかね。そこをつくっていかなくちゃいけないと思うんだ。

長野:そう考えると、大手メディアのできることはまだまだあるという気がします。廃れゆくメディアとか言われますけど、依然影響力はあるし、事実確認のハードルがやっぱり高いじゃないですか。速報を大事にしていた米国のCNNがスローニュース宣言をして、きちんと事実確認をするメディアにシフトチェンジしているように、大手メディアも、そういった意味での信頼性のあるファクトチェック機関としての役割を担うことは大切ですね。

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