星:そうですね。昔、(衆院議員だった)与謝野馨が、「日本の財政再建が進まないのはテレビのせいだ」と言い出したことがあってね。「どうしてですか」と尋ねたら、昔は新聞が主流メディアで、消費税が大事だ、財政再建が大事だと書いてくれたけど、テレビが主流になったら、テレビはそういう絵にならないニュースはやってくれない。だから財政に対する世の中の関心がどんどんなくなって、さらに悪化した。「テレビのせいだ」って言うんですね。

長野:否定しづらいですね。

星:絵にならない、わかりづらいニュースは食いつきが悪いっていうことですよね。
長野 わかります。報道に憧れてバラエティーから転向した私としては、正直だいぶ私の憧れていた報道の世界とは変わってしまったなって感じます。

星:昔とは変わったよね。

長野:変わりましたよ! 当時、報道番組は記者もキャスターも報道のプロフェッショナルによって取材、製作されていました。閉鎖的ともいえるけど、私が37歳で初めて報道の仕事させてもらったときは、「あの方たちと報道をやりたい」っていう憧れの世界だったんです。それがいつしか……いつでしょう、やっぱりここ4~5年かな?

星:という気がするね。この数年の変化は大きい。

●新しいテレビジャーナリズムの過渡期

長野:「わかりやすいニュース」は「多くの視聴者が知っているニュース」であり、SNSの影響で、誰もが平場でニュースについて発信できるようになってきたからということもりますが、伝え手もより身近に感じるタレントさんや、バラエティーに出ている方が担当するようになった。

星:ニュースの大衆化はいいことだと思うけど、わかりづらい問題が出てきたときに対応できるかというと、疑問ですね。例えば、今回の学術会議の一件。この問題の本質は、突然理由もなく6人の任命を首相が拒否したことなのに、いつのまにか学術会議に10億円も予算を払ってるのおかしいよね、という話になってしまう。問題のすり替えが簡単に行われてしまう。今後、こういう現象は頻発すると思う。

長野:そうですね。ニュースが平場でみんなに語られるということはSNSのすごくよい点なのですが。それだけに、テレビ報道の景色はだいぶ変わったけど、新しいテレビジャーナリズムや番組作りが生まれていく過渡期なのかなと感じます。

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