(撮影/写真部・馬場岳人)
(撮影/写真部・馬場岳人)
AERA 2020年11月23日号より
AERA 2020年11月23日号より

 AERA 2020年11月23日号では、「体温マネジメント」を特集。「平熱が低いほうが長生き」というデータと、冷え症にまつわる疑問に回答する。

【図を見る】平熱と手足の温度差が冷え症の基準の一つ

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■疑問その1 長生きなのは平熱高い人か低い人か 

 人間は体温が高いほうが酵素がよく働き、体のなかのさまざまな機能が高まる。これは間違いないと言えそうなのだが、一方で、気になるデータもある。

 2017年12月、英国の医学専門誌に、米国の医師らによる論文が発表された。米国の大規模病院の18歳以上の外来患者、約3万5千人のビッグデータから、平熱の個人差と健康との関連を解析。その結果、平熱が0.149度高くなるに従って、1年後に死亡している確率が8.4%上昇する、つまり「体温が低いほうが長生き」なことがわかったという。

 研究者のなかには、このデータについて、「どこまで厳密に測定されたのか不明」として懐疑的な意見を示す人もいるが、生命創成探究センターの富永真琴教授は「可能性はある」と言う。

「平熱の高い人は代謝が高く、エネルギー消費量が多い。そしてエネルギーを燃やす際には、病気のリスクを高める活性酸素が発生します。代謝が低い人は活性酸素の発生量が少ないので、病気リスクが少なく長生きできる。そう考えることはできます」

 今、人為的に体温を大きく落とす研究が世界中で進められていると、富永教授は言う。

「たとえば、重症患者を救急車で搬送する間、人為的に患者の体温を10度落とすことで“冬眠状態”にし、治療開始までのダメージを食い止めることができないか。そんな研究が進んでいます」(富永教授)

 それでは、我々は長生きのために、体温を下げたほうがいいのだろうか?

「いえ、これはあくまでも大幅に体温を下げて冬眠状態にできたら、という話。1度や2度体温が下がったからといって、長生きできるということはないでしょう。それよりも体温を上げることによるメリットのほうが大きいと考えられます」(同)

■疑問その2 つらい冷え症どうやったら治せるの? 

 手足が冷えて眠れない、しびれが出る……。つらい冷え症、有効な治療法はないのだろうか。横浜血管クリニック院長で冷え症外来を担当する林忍医師はこう話す。

「冷え症とは、体の一部、または全身が冷たく感じるという本人の感覚なんです。冷え症は病気ではなく体質ですから、治療法はありません。あるのは改善法。大切なのは運動と適切な入浴です」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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