しかし、民法上は20年を経過すると損害賠償請求権を失う。昨年8月に出た一審判決は、その「除斥(じょせき)期間」が壁となった。16年のPTSD発症時ではなく、19歳の性被害を受けた最後の時期を除斥期間の起点とされ、敗訴。石田さんは控訴し、12月に出る判決を待っている。

 長い間、石田さんは加害教員と年齢の近い男性を見ただけで警戒し、男性と親密な関係を持つことができないという。石田さんは言う。

「被害に遭わなかったら、もっと普通に生きていたと思います。金銭的な補償以上に、加害者が心から謝ってくれることが救いなんです」

■処分は「氷山の一角」

 安全なはずの学校の教室で何が起きているのか。文部科学省によれば、全国の公立小中高などでわいせつなどを理由に処分を受けた教員は年々増加傾向にあり、18年度は前年度比72人増の282人と、過去最多となった。 

 教員による児童生徒へのわいせつ被害が後を絶たない背景にあるのが、圧倒的な支配関係だ。学校では、児童生徒にとって教員は絶対的存在。「逆らえない」立場を利用し、自らの欲望の赴くまま行動する問題教員が増えている。子どもから被害を訴えるのは難しく、わいせつ教員の処分数は「氷山の一角」との指摘もある。(編集部・野村昌二)

AERA 2020年11月2日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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