子どもは親に心配をかけたくないから、悩みや不安をなかなか言いません。親の前では「こういう子でいたい」という理想があるんですね。

 ところが現実はそう上手くはいかず、苦しくなってしまう。理想と現実に挟まれて、押しつぶされてしまう。

 そうなる前に、親が子どもにしてあげられること。

 以前、受け持った学級の保護者会で、ある女子児童のお母さんが参考になることを教えてくれました。「私、娘と飲み会をしています」と言うんですね。娘を見ていてちょっと変だなと思ったら、「散歩に行こう」と連れ出して、自宅から2番目に近い自動販売機まで一緒に歩いて、そばにあるベンチに座って2人でジュースを飲む。

「そこで世間話をしているうちに、だんだん子どもが違う表情になって、ポロッと本音を言うんです」

 日常の中に、心を開きやすい「余地」を用意することが重要なのですね。

 子どもは悩みを打ち明ける時、核心から話さないということも親御さんには知っておいてほしいです。「友達が大変なんだ」と物語を置き換えて話すこともあります。最初に話を聞いた段階では「大したことないな」という印象を持つかもしれませんが、くれぐれもすぐに判断しないでください。

 ただし、あまりにも根掘り葉掘り聞こうとすると、心を閉ざしてしまうこともあります。「見ないふりして見守る」ことが大事です。

(構成/編集部・藤井直樹)

AERA 2020年9月14日号