■全面否定し排除する

 その2週間ほど前に起きたのがアマゾン解約運動だ。アマゾンが有料サービス「プライム・ビデオ」のCMに、国際政治学者の三浦瑠麗氏を起用。それに反発した人たちがツイッター上でアマゾンプライムの解約を呼びかける運動を展開し、一時「#Amazonプライム解約運動」というハッシュタグがツイッターのトレンドで1位に入った。

 反発を生んだ理由の一つは、三浦氏が2018年、フジテレビの番組「ワイドナショー」で大阪に北朝鮮の工作員が潜伏していると発言したことだ。在日韓国・朝鮮人への差別を助長するとして問題視する声が上がった。さらに徴兵制の導入を著書で主張したり、安倍首相が議長を務める「未来投資会議」のメンバーになったりと「親安倍」色が強いことが批判につながった。

 ノンフィクションライターで『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の著者、石戸諭(さとる)さんは、自らはリベラル的価値観を有しているとしつつ、「解約運動」への違和感を口にする。

「三浦氏の起用に抗議して自分が解約するのは自由ですが、『一緒にやろうぜ』と徒党を組むのは、いじめに加担するようなもの。右派、左派問わず、自分が気に入らないという理由であまりにも気楽な運動が横行しています」

 7年8カ月続いた安倍政権のもとで、安倍氏をリトマス試験紙として親安倍なら右、反安倍なら左とする単純化された分断が進んだ。その中で左右問わず台頭したのは、主張が自分たちと少しでも違う人を全面否定し、排除する論理だ。(編集部・石臥薫子)

世界的な分断の背景に被害者意識の拡大 「奴ら」のせい…SNSで負の感情も増幅に続く

AERA 2020年9月14日号より抜粋