棋聖と王位のタイトルを獲得、八段に昇格した藤井聡太二冠。会見では自筆の色紙を手にした/8月20日、福岡市 (c)朝日新聞社
棋聖と王位のタイトルを獲得、八段に昇格した藤井聡太二冠。会見では自筆の色紙を手にした/8月20日、福岡市 (c)朝日新聞社

 棋聖のタイトルを最年少で獲得してから35日。4連勝で王位も獲得し二冠を達成。八段にも昇格した。藤井聡太二冠の誕生までは、異例の記録ずくめだ。AERA 2020年8月31日号から。

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 また一つ歴史を塗り替えた。藤井聡太棋聖(18)が3連勝で王手をかけ、臨んだ第61期王位戦七番勝負第4局で木村一基王位(47)に圧勝、二つ目のタイトル奪取と八段昇格を決めた。羽生善治九段(49)の最年少二冠(21歳11カ月)を大幅に更新、加藤一二三(ひふみ)九段(80)の最年少八段昇格記録(18歳3カ月)も上回った。

 17歳11カ月で渡辺明三冠(36)から棋聖位をもぎ取り、最年少初戴冠記録を打ち立ててからわずか35日での快挙だった。対する木村九段は昨年、タイトル挑戦7回目にして王位戦に勝ち、最年長初戴冠記録を作った「おじさんの星」。劣勢でも最後まで諦めない戦いぶりから「千駄ケ谷の受け師」の異名を持つ実力者も、破竹の勢いの若者の攻撃を受け切れなかった。

「自分にとって初めての2日制の対局で、その中でいろいろ得るものがあったと思います」

 対局後の記者会見で、普段どおりの謙虚さを見せた藤井二冠は、ストレートでの4連勝についてもこう述べ、浮ついたところを全く見せなかった。

「望外というか、自分の実力以上の結果が出たのかなという気がします」

 あどけない表情と対照的な分別臭い物言いのギャップ。そして、驚異的な成長速度が支える圧倒的な戦績は、「藤井時代」の本格的な幕開けを物語る。

 そもそも記録ずくめだった。10歳でプロ棋士の養成機関「新進棋士奨励会」に入会すると、中学1年生で三段リーグに昇格して1期で抜け出し、中学2年生の14歳2カ月で四段昇進、史上最年少でプロになった。中学生棋士は加藤九段、谷川浩司九段(58)、羽生九段、渡辺三冠に続く5人目で、いずれタイトル争いに絡んでくることは誰もが予想していたが、成長曲線が尋常ではなかった。

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