大の子ども好きの夫は、長男の妊娠中には妊婦健診にほぼ毎回付き添い、エコーなどで成長するおなかの子の様子を見るのを楽しみにしていた。「今回それができなかったのは大きな楽しみを逃した感覚」という。赤ちゃんとの面会の制限も「かわいすぎてずっと一緒にいたかったのに制限されたのがつらかった」。その分、妻の入院中は長男が寂しくないよう、思いっきり遊ぶように心がけたという。

 おなかの中で命の芽吹きを感じ、数カ月間育てて出産する女性と違い、一般的に男性は親としての自覚を持ちにくいと言われる。コロナ禍で健診の付き添いや立ち会い出産、産後の面会もできなければ、男性はますます育児の補助的存在になってしまいそうだ。特に第1子だった場合、ワンオペ育児が増えるのではないかと心配になる。

 コロナ禍の妊娠・出産は苦しいことも多かったが、唯一良かったと感じることがある。それが夫の在宅勤務だ。通勤時間が省かれるおかげで、上の子の保育園の送り迎えや子どものお風呂は夫に任せられる。実家の母に来てもらい任せるはずだった食事づくりは、家族から届く手料理のほか、お総菜の宅配サービスを利用。週に1回、4人分3食を取り寄せ、約7千円かかる。掃除も家事代行サービスに依頼。床の拭き掃除や水回りの掃除など3時間半で約1万円だ。経済的な負担は結構重いが、必要経費だと割り切り、床上げまではこれでしのぐつもりだ。

 妊娠初期に思い描いた出産からはほど遠く、第1子のときと比べ不安で孤独な妊娠・出産だった。でも赤ちゃんや家族が無事でいる。これ以上望むことはない。(構成/編集部・深澤友紀)

AERA 2020年8月24日号より抜粋