「特に流行地から帰省するときは、子どもが症状のない病原体保有者になる可能性も考え、2週間ほど前から感染リスクのある行動は控えたほうがいい。受験生が入試前に不要な外出をしないのと同じ考え方です」

 夏休みといえば新作映画のシーズン。今年は夏休みに合わせて作られた映画以外にも春休みやゴールデンウィークに公開延期になった作品も上映され、子ども向けの映画もそろっている。高山医師は映画館での映画鑑賞について次のように語る。

「流行している地域では、基礎疾患があるなどハイリスク者は避けたほうがいいですが、映画館は席を移動して動き回るわけではないし、みんながマスクをつけて見るのであれば、とりわけリスクは高くない」

 各地の映画館は全国興行生活衛生同業組合連合会が5月に作成したガイドラインに基づいて感染対策を実施している。

 新宿駅から徒歩5分にある「新宿バルト9」を訪ねると、入り口付近に体温を測定するサーモグラフィーカメラが設置してあり、来場者をすべてチェックしていた。サイトマネージャーの島田貴行さんによると、高温が検知された人は改めて体温計で測定し、37.5度以上の場合は入場できないという。チケットは前後左右1席ずつ空けて販売し、最大でも50%しか入場できない。来場者が触れる場所は抗菌・抗ウイルスコーティングを施し、利用した座席の両側の手すりや自動券売機の画面などはこまめに消毒している。

 気になるのは場内の換気だ。映画館は窓もなく、閉鎖された空間というイメージがあるが、

「映画館は興行場法に基づいて換気基準が定められていて、当館では常時換気が行われ、数分で空気が入れ替わるようになっています」(島田さん)

 来場者にはマスク着用をお願いし、シアター内では上映の前後も会話を控えるよう呼びかけている。島田さんは言う。

「映画館は非日常を体験できる空間です。お子様たちにも夏休みに特別な思い出を作ってもらえるよう、十分に感染対策を行ってお迎えしたいと思います」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2020年8月3日号より抜粋