発達障害は見た目ではわかりにくいため、“フツウ”になれと言われ、苦しむ当事者も多い。多様な障害特性をわかりやすく映像化した(写真:東海テレビ提供)
発達障害は見た目ではわかりにくいため、“フツウ”になれと言われ、苦しむ当事者も多い。多様な障害特性をわかりやすく映像化した(写真:東海テレビ提供)
自閉症のラッパーGOMESSさんが一人称で伝える。「僕が僕を諦めずにいられるのは 僕を諦めずに見ていてくれる人がいるから」(写真:東海テレビ提供)
自閉症のラッパーGOMESSさんが一人称で伝える。「僕が僕を諦めずにいられるのは 僕を諦めずに見ていてくれる人がいるから」(写真:東海テレビ提供)

 昨年6月にYouTubeで公開された「発達障害をテーマにしたドキュメンタリーCM」が共感を集めている。発達障害をテーマにしたドキュメンタリーCMの何が心に刺さるのか。AERA 2020年7月13日号から。

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 東海テレビが制作した発達障害をテーマにしたドキュメンタリーCM「見えない障害と生きる。」が、反響を呼んでいる。昨年6月にYouTubeで公開されると現在までに145万回以上再生され、JAA広告賞消費者が選んだ広告コンクールの経済産業大臣賞や日本民間放送連盟賞のCM部門最優秀賞などを受賞した。発達障害は「見えない障害」の言葉通り、映像化も難しいテーマだが、なぜ視聴者の心に刺さる作品が生まれたのか。

 全編で5分間のCMには、発達障害の一つ、学習障害(LD)で文字が読めない教師や、聴覚過敏で周囲の音に襲われる学生、独特のこだわりを持つ掃除好きの男性など6人の発達障害当事者が登場し、最後は自閉症のラッパー、GOMESS(ゴメス)さん(25)のラップが90秒間続く。

 カメラを見つめ、画面の向こうの「あなた」に問いかけるGOMESSさん。冒頭はこうだ。

僕は誰だ 人間
でも僕はフツウじゃないらしい
だから何だ 障害者 健常者
違う 僕は僕だ
言葉に騙(だま)されないで
障害は確かにあるけど
僕とあなたの間にあるその障害は 僕だけのものじゃないと思うんだよ

 GOMESSさんはラップに込めた思いをこう語る。

「『障害者』という言葉で線引きするのっておかしいと思っていて、生きづらさがあって見えている景色が違うだけ。同じ人間なんだと伝えたかった」

 10歳の時、パニックを起こしたことを機に自閉症と診断された。特に聴覚過敏が強く出て、鳥が電線から羽ばたいた音や、父親が新聞を広げる音などでパニックになり、周りにあるものを壊した。15歳までの5年間は学校にも行けず、「世界のすべてが敵だと思っていた」。

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