最上が言う。

「状況に細かい違いはあれど、各競技ともコロナで同じ課題を抱えていると確信していました。『ラグビーだからできた』では、スポーツの課題解決にならないのです」

 ここへバレーボール、ハンドボールなども加わり、スポーツ推薦とは縁が薄いチアダンスではインスタグラムでの演舞の動画をアップする際に「#チアを止めるな2020」とハッシュタグを付記する人が増えた。これまであまり目が届かなかった人たちにも知られるよう、知恵を絞った。

 こうしてラグビーから始まった「止めるな」の波は、他の競技も含めた「#スポーツを止めるな2020」(「スポ止め」)に転化する。

 5月30日には、オンラインで「止めるな」についてのパネルディスカッションが開かれ、計6種目の関係者が集まった。すると、登壇者だった大学スポーツ協会「UNIVAS」の事業企画部長が、6月中旬に公式サイト内で「スポ止め」の応援ページを立ち上げた。

 このサイトは、「#UNIVAS」のハッシュタグがついた「止めるな」の動画を、協会の職員が手作業で抽出しサイト上で表示。競技ごとに動画の一覧性がぐんと増した。わずか半月足らずで、学生支援の形がひとつのサイトになったのだ。

■コロナ禍以外も使える

 翻って、学生を受け入れる側の“強豪”は、こうした動きをどうみているのか。

 全国大学選手権で3季続けて決勝に出ている明治大学ラグビー部監督の田中澄憲(44)は、全国上位校とのつながりに恵まれている。そのため直近の戦力補強で「ラグ止め」を頼る機会は少ないとみている。それでも「これからコロナがなくなっても使えるアイデア」と、「ラグ止め」を称賛する。

 田中は、こう続ける。

「いいところだけ編集した映像を見ると、みんな、いいんですよ。だから、いいと思った選手を1試合通して見られるリンクが張られていると便利ですね」

 ボールを持っていない時などに映る勤勉さや人間性を確かめたい各大学の要望は、火付け役の野澤も理解している。だから将来的には「スポ止め」で人材を発掘する側に向けた、会員制の特別サイトを作りたいという。複数の試合をさかのぼって観られたり、先方と連絡先を交換したりできるようなサイトの青写真を描いている。

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