5月、「#ラグビーを止めるな2020」のツイートを受けて(写真左)、群馬・桐生第一高校ラグビー部の霜村誠一監督が即座にプレー動画をアップ。4万回以上が再生されている
5月、「#ラグビーを止めるな2020」のツイートを受けて(写真左)、群馬・桐生第一高校ラグビー部の霜村誠一監督が即座にプレー動画をアップ。4万回以上が再生されている
野澤武史さん(写真左)と霜村誠一さん(写真右)/撮影・向風見也
野澤武史さん(写真左)と霜村誠一さん(写真右)/撮影・向風見也

 SNSで急速に広がっている「止めるな」と書かれたハッシュタグ。その文字には、学生たちの「将来」が詰まっている。勢いはもう、止まらない。AERA 2020年6月29日号の記事を紹介する。

【写真】野澤武史さんと霜村誠一さん

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 春から夏に実施予定だった各種スポーツ大会は、相次いで中止に──。新型コロナウイルスの感染拡大は、プロアマ問わずスポーツ界を大きく蝕んだ。

 それは、昨年のワールドカップ(W杯)で感動を呼んだラグビー界もしかり。3月末に開催を予定していた全国高校選抜大会などが中止となっていた。

 高校生たちにとってこうした大会は、スポーツ推薦など自身の進路につながる「自己表現」の場でもある。そんな貴重な機会をコロナで失った高校3年生へ、手を差し伸べたい──こうした動きが、SNSでうねりを起こしている。

■プレー動画拡散で注目

 元ラグビー日本代表の野澤武史(41)が今年5月に始めたプロジェクト「#ラグビーを止めるな2020」(「ラグ止め」)。スポーツ推薦で大学進学を目指す部員や生徒の進路選択を支えたい指導者らが、ハッシュタグ付きのプレー動画をSNSでアップし、関係者の目に留まるよう拡散を促している。

 日本ラグビーフットボール協会のリソースコーチとして人材発掘にも携わる野澤は、全国上位チーム以外にも大器晩成型の有望株がいるのを知る。だが、学生のなかにはスポーツ推薦に伴う授業料免除がなければ、家庭の事情などで大学進学や現役続行をあきらめるケースもある。才能が失われる課題が常にあった。加えていまの災禍も重なって、大会を観られない大学側も選手のリサーチに難儀していた。

 両者をつなぎたい思いが、「ラグ止め」の出発点となった。

 野澤は、まず元代表の廣瀬俊朗(38)らと実働部隊を結成。W杯日本大会に出た堀江翔太(34)ら有名選手へツイッターでのリツイートを依頼し、拡散を期待する。専門誌の姉妹サイト「ラグビーリパブリック」などの取材を受けて記事が配信され、第1波を起こした。

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