野澤が言う。

「いろんな高校の先生、関東、関西の1~2部リーグくらいまでの大学で知っている先生、リクルーターには声をかけました。今回のためにツイッターアカウントを開いてくれた学校もある。彼らはまだフォロワーが少ないから、影響力のある人間にリツイートを頼みました。細かくロビー活動をしていかないと」

 そんな「ラグ止め」のインパクトに触れたのが、廣瀬や堀江と同時期に日本代表となった経験を持ち、群馬の桐生第一高校の監督として前年度まで2季連続で全国大会に出場した霜村誠一(38)だ。野澤から「ラグ止め」について聞くや、卒業後もラグビーを続けることを希望する3年生と情報共有をはじめた。普段から自主性を重んじて、学生に試合の分析を委ねていたこともあり、わずか30分程度で過去の試合映像から抜き出したい箇所を提案してくる選手もいた。

 霜村は自身のツイッターアカウントで、各選手のビデオクリップを寸評つきで投稿。すると数時間後には、大学関係者から電話が鳴った。選手についてもっと教えてほしい──そんな内容だった。一部の生徒には複数の誘いがあったという。

■自己肯定感や自信に

 前出の野澤は、こうも言う。

「強豪でない県のチームほど、たくさん動画を出した方がいい。そうなれば大学のリクルーターも、いつか『あの選手を観に行く』となる。観られる確率は上がります」

 事実、「ラグ止め」の力は、全国での白星から遠ざかる公立校へも及んだ。

 富山県立砺波(となみ)高校の新任監督、城石敦也(22)は、部員の編んだ動画が一気に広がる様子に喜んでいた。

「自分のプレーを観てくれる人がこんなにいる、それこそが自己肯定感や自信につながるはずです」

 そして“波”は、ほかの競技にも影響を与えることになる。

 野澤と大学の同級生で日本ラグビー協会リソースコーチを務める最上紘太(41)は、バスケットボール界にも同じく学生支援を目的とした「#バスケを止めるな2020」を提案した。

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