国会で答弁する安倍首相。「安倍1強」と言われ続けてきたものの、新型コロナの対応をめぐって支持率を落としている (c)朝日新聞社
国会で答弁する安倍首相。「安倍1強」と言われ続けてきたものの、新型コロナの対応をめぐって支持率を落としている (c)朝日新聞社
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 持続化給付金事業の委託をめぐる利益誘導疑惑。この手の話は、森友・加計問題でも、桜を見る会でも、これまで様々な場面で聞いた。私たちはこの状態に慣れすぎてはいないだろうか。AERA 2020年6月22日号の記事を紹介する。

【画像】安倍政権と黒川検事長の「蜜月」はここから始まった

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 安倍政権による“身内”への利益誘導は、森友・加計問題、大学入学共通テストで予定されていた英語の民間試験導入、桜を見る会などでも指摘されてきた。我々はそうした疑惑に慣らされてきてはいないだろうか。

 広島大学認知行動科学研究室の有賀敦紀准教授は言う。

「心理学の用語で『慣れ』は馴化(じゅんか)と言います。人間は新しいものには敏感に反応しますが、徐々に時間がたつと反応しなくなります。安倍政権の疑惑に対する慣れは、実際にメディアや国民に起きていると感じます。報道があってもなくても、疑惑が続いていることに慣れてしまっているようです。その結果起きることはとてもシンプルで、政治に対する興味を失うだけです」

 メディア側の問題は後述するが、まずは背景を見ていきたい。加計学園の獣医学部新設をめぐって政府を批判する元文部科学事務次官の前川喜平氏はこう振り返る。

「私が約40年前に役所に入ったときは、官僚主導でした。利益誘導や腐敗、汚職というのも、それぞれの役所ごとに官僚が起こします。政治家と官僚の癒着もそれぞれ役所ごとに縦割りにありました」

 それが、後の政治改革で、政治主導という方向にシフトする。第2次安倍政権以降は官僚人事も掌握して官邸主導はさらに進み、「安倍1強」と言われる状態が続くことになった。

「政治主導は正しいと思いますが、安倍政権は政治主導というよりは、『官邸1強独裁体制』と言えます。権力が集中すると、利益誘導や腐敗も自然と権力中枢に集中します。現政権の特徴は、そこに『改革』という名目をつけていることです。昔は裏でこそこそやっていたものを、正面玄関から大きな顔をして改革を偽装してやるようになっています」(前川氏)

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