愛知県内のある市議会議員はこう打ち明ける。

「端末は市町村が挙手して申請する方式ですが、オール与党の知事の権力は絶大で、選定も鶴の一声で決まる可能性が高い」

 名古屋市で19歳、高校2年生、小学4年生の3人娘を育てているシングルマザーの伊藤陽子さん(43)はこう訴える。

「小4の娘が学校からもらってきたアンケートは、家庭でWi-Fiが無制限に使える環境にあるかどうかを聞くだけ。機種によってはクラウドを介さないとプログラムが使えないので、個人情報漏洩も心配です」

 この問題では、大村知事のツイッターに同様の懸念を投稿した複数の保護者や子どもたちが、知事の投稿を見られないようブロックされたという。

 ただ、端末導入について愛知県教育委員会はこう説明する。

「機種は未定で知事が決めることでもない。既に端末を持っている生徒はそれを利用すればいいし、市町村まで同メーカーで統一する必然性もありません」

 県教委の見解とは裏腹に懸念が広がるのは、最近の大村知事の迷走ぶりゆえだ。大村知事に何が起きているのか。愛知県内の政治に精通する愛知大学の後房雄教授(政治学)は言う。

「パフォーマンス偏重で行政手腕に乏しい河村市長と比べ、大村知事はクリーンヒットはないもののコロナ対策も含めて堅実に県政運営をこなしてきたが、逆に情報発信は不得手。『医療崩壊』発言も、東京と大阪の知事が目立っていることに焦った勇み足でしょう。自分らしく愚直を通せばいいと思います」

(編集部・大平誠)

AERA 2020年6月15日号