<早紀江さん> それは直接聞きました。大変な所に入れられたと思いました。これじゃもう、一番出にくいなと。本当かどうかわからないのですが。

<滋さん> 安さんが、めぐみを金正日政治軍事大学で見たというのは直接、経験したこと。家庭教師の話は、他の人から聞いた話なんです。比較的新しい時期だということでしたが。

<早紀江さん> 安さんは9月17日の時点で、めぐみが亡くなったというのは絶対に違う、死んでいないと言いたかったと。あまりいろいろな話が出ていて、もう訳がわからないですよ。いつまでも闇の中で、いつまでも生殺しで。いろんなことが出てくるのに、本当の核心はわからない。だからいまはその核心が出てくる過程だと思っています。本当のことが出るのを待っています。何か起きるたびに驚いていては、生きていけない。だから、あまり動揺しないようにしてるんです。

――けれど、めぐみさんは絶対に生きていると。

<早紀江さん> ずっと思っていますよ。そう思ってあげないと可哀想ですよ。せっかくここまで我慢して……。

<滋さん> 死んだとの明確な証拠がない限り、生きていると信じます。

――ご夫妻の訪朝問題が論議を呼びました。

<滋さん> 私は、9月17日以後は、同じ被害者の家族といっても、生きている人と死んだといわれる人がいて、かなり状況が変わってきたんだから、やはり、個々の状況に応じて考えるべきだと思うんです。

<早紀江さん> でも北朝鮮はこちらの動きを見てますよ。行くとなると、それを利用して何かやってくるに違いないと思う。そういう所には行かない方がいいというのが私の考えです。孫に会いたいかと言われれば、誰だって会いたいです。抱きしめてあげたいと思いますよ。

――この件は、おふたりで話をなさるんですか。

<早紀江さん> 話しても、意見が合いません。主人は「行きたいんだ。親の気持ちも大事だ」と言いますから。でも、拉致事件はものすごく大きな問題ですし、行ったらどうなるか、よく考えないといけない。5人の方たちの帰国後、こう聞きました。横田夫婦が北朝鮮に来るように、これだけのことを言いなさい、と言われて来たと。やっぱりそうかと。

<滋さん> (去年10月初めに)政府調査団が北朝鮮から、めぐみの夫というキム・チョルジュさんの手紙を持ってきて、めぐみと結婚して幸せだったとか、こんな形で手紙を出さなきゃならないのは悲しいとか、両親がこっちに来てくれればいろんな話ができますと書いてありました。めぐみの墓があって、遺骨が出れば、もうあきらめざるを得ない。違っていれば、北朝鮮の主張全体がウソということになる。行って確かめられるならということなんです。

 家族会としては、現時点では行かないことに決めました。でも事情が許せば、1カ月後に行く可能性もあるし、半年後も行かないこともある。今の時点では、行かないということなんです。

<早紀江さん> 私は、いくらこちらの思いを伝えても絶対、違うようにされると思う。それなら行かない方がいい。指導者次第で何でもできる国ですから。

――ヘギョンさんのことをどうお思いですか。

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