1964年10月10日、東京オリンピック開会式。美智子さまはピンクベージュの帽子が印象的な華やかな装いで臨まれた (c)朝日新聞社
1964年10月10日、東京オリンピック開会式。美智子さまはピンクベージュの帽子が印象的な華やかな装いで臨まれた (c)朝日新聞社

 1964年、高度経済成長期に開催された1度目の東京オリンピック。その開会式で印象的だったのが、美智子さまが華やかなファッションでまっすぐに前を見つめる姿だ。AERA 2020年5月25日号では、美智子さまの姿や言葉から、当時の日本を読み解いた。

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 NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」が、再放送されているのをご存じだろうか。2019年末の本放送終了からあまり時を経ず、20年4月から週3日のペースで再放送中だ。

 もちろんそれは、7月22日から始まるはずだった東京2020オリンピックに合わせてのこと。再放送の最終回は同月17日。幻となった24日の開会式の、ちょうど1週間前だ。

 NHKが再放送を発表したのは2月13日。ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に入った10日後だ。あの頃、世の中はまだのんびりしていた。だが事態は日に日に深刻化、3月24日、オリンピックの延期が決まった。それでも予定通り、「いだてん」再放送中。

 と、こだわるのには訳がある。昭和と令和、その違いをしみじみ感じるのだ。昭和のオリンピックを描いたドラマだから当然ではあるが、それだけではない。皇后雅子さま(56)と、上皇后美智子さま(85)。お二人の「意味」のようなものを考えるのだ。

 きっかけは「いだてん」のオープニング映像だ。どーんと重厚なのが従来の大河ドラマのオープニングだとすると、まるで違う。ポップな画面を基調に、話の展開に合わせ少しずつ変わっていった。そして最終回の2回前、美智子さまが登場した。

 歴代オリンピックの映像が流れ、最後が東京。画面の左上に「1964 TOKYO」と出て、美智子さま。ほんの数秒だがとにかく目立ち、皇太子さま(当時)をはじめ皇族方がいる開会式の貴賓席だと後から気づいた。ピンクベージュの帽子に同色のコートだろうか、とても華やかな美智子さま。だが、それ以上に印象的なのが、まっすぐな目だ。曇りなく前を見つめている。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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