ブルックリンのCityMD。5月7日は30人以上が並んでいた(撮影/津山恵子)
ブルックリンのCityMD。5月7日は30人以上が並んでいた(撮影/津山恵子)

 新型コロナの爆発的感染が起きたニューヨークで、急速に「抗体検査」が進んでいる。米国では、経済活動再開の鍵をも握っていると言われているが、その検査の実態とは。

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 ニューヨーク・ブルックリンの商店街。戦前からの3階建て煉瓦造りアパートが並ぶ1階に「CityMD(シティメッド)」というチェーンのクリニックがある。筆者の自宅から歩いて10分。このシティメッドのようなクリニックを含め、7日現在、ニューヨーク市内で、アポなしで抗体検査が受けられる。

 シティメッドは、ニューヨークの労働者階級にとって重要な存在だ。米国の医療システムでは基本的にかかりつけの医師の指示がないと、治療や入院ができない。その上、日本のような国民皆保険がなく、国民の1割弱に当たる約2750万人が無保険で、かかりつけ医はいない(米国勢調査局調べ)。しかし、シティメッドは、日本のように予約なしの受け付けで、医師の診断と薬品の処方、血液・X線検査などが受けられる。

 本当に困った時の「お助けクリニック」で、抗体検査まで受けられるというニュースに、市民の間で安堵感が広がった。そこで、シティメッドが抗体検査を始めた2日後の4月30日、前述のブルックリンのクリニックに行ってみた。結果は20人を超える列があり、しかも受け付けを外から覗くと「社会的距離(1.8メートル)」が取られていない状態だった。筆者は気管支が弱いので、抗体検査を受けるために感染リスクを取りたくないと判断し、ここで引き返した。

 以下は、実際に抗体検査を受けた人の話である。

 友人のニューヨーク市職員の女性は、5月3日、シティメッドで抗体検査を受けた。

「自分が抗体を持っていると知ることで、ある程度は他人にはうつさないという確信になり、他人にいつうつすかわからないという不安から逃れられる」

 というのが理由だ。

 彼女と同じような理由で、5月上旬も抗体検査ができるクリニックに、人々が殺到している。すでに7週間目に突入するロックダウンの最中、まさに、いっときでも「心の平穏」を得たいという気持ちが、抗体検査に人々を向かわせる。

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