「この国にもう余力はない」 賃金8割支給がイギリスにできて、日本にできない理由 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「この国にもう余力はない」 賃金8割支給がイギリスにできて、日本にできない理由

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緊急事態宣言を全国に拡大すると発表した安倍首相/4月17日 (c)朝日新聞社

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経済学者 水野和夫さん(67)/法政大学教授。著書に『終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか』『資本主義の終焉と歴史の危機』など (c)朝日新聞社

経済学者 水野和夫さん(67)/法政大学教授。著書に『終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか』『資本主義の終焉と歴史の危機』など (c)朝日新聞社

弁護士 明石順平さん(35)/著書に『アベノミクスによろしく』『人間使い捨て国家』『ツーカとゼーキン』など(写真:本人提供)

弁護士 明石順平さん(35)/著書に『アベノミクスによろしく』『人間使い捨て国家』『ツーカとゼーキン』など(写真:本人提供)

 新型コロナウイルス対策における政府の対応で疑問視される、補償の財源問題。我々には何ができるのか。日本に未来はあるのか。AERA 2020年5月4日-11日号では、経済学者の水野和夫さん、弁護士の明石順平さんのそれぞれの分析を紹介する。

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*  *  *
●寛容の精神で企業の内部留保を休業補償の財源に
水野和夫さん(67)経済学者

 いまだに政府は人命よりも経済重しと考えている。そう感じます。営業自粛を要請しながら休業補償しないのは、感染する以前に死んでくださいと言っているようなものです。

 補償のための財源は、企業の内部留保金で対処できます。財務省の法人企業統計によると、国内企業の内部留保金は約460兆円。そのうち、本来は従業員が受け取るはずの、労働生産性の上昇に応じて支払われるべき賃金分など「過剰」に蓄積したものが、約130兆円あります。うち、すぐに現金にできる資産である現金・預金、短期有価証券などが約70兆円。これを取り崩して使うんです。

 本来なら各社の従業員に還元すべきものですが、いまは日本の危機ですから、「日本株式会社の内部留保金」として国内の全雇用者6千万人に分ける。1人あたり約100万円。足りなければ、第2弾として残りの60兆円も用意しておけばいい。

 企業経営者は「まさかの時に」と内部留保金を積み上げてきました。いまの日本の状況は「まさかの時」に該当しないのか。政府が頼りない今こそ、「財界総理」として経団連がまず、呼びかけるべきです。

 そのときに大切なのは、中世の思想家エラスムスが唱えた「寛容」の精神です。近代社会は「合理性」を重んじ、経済成長であらゆる問題を解決する時代でした。限られた土地、エネルギー、人間という中で成長する必要があり、「一文たりとも無駄にしない、払わないぞ」というあしき合理性基準が出てきた。

 しかしこれからは、「ここはびた一文払わないなんて合理性を言わず、寛容主義で全員助け合おう」という、資本家にいちばん欠けている「寛容主義」の精神が必要となってきます。

 合理性基準がある限り、人間も企業も「より速く、より遠く」を行動原理とせざるをえません。いまは異常なグローバル化、つまり異常な合理化が進んでいます。過剰なグローバル化をやめ、たとえばEUほどの小さい単位で、経済だけでもまとまるのが理想だと考えます。

 長い年月はかかりますが、これを機に合理性社会を終わらせる。大きな発想の転換も求められるのではないでしょうか。


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