国内の医療問題についてブログで問題提起を続けている米シカゴ大学名誉教授で、元内閣官房参与の中村祐輔医師は、日本でこれまでとられていたクラスター対策重視の方針を厳しく批判する。

「海外からの入国者の防疫やクラスター潰しで感染拡大を防ぐのは無理であることは、潜伏期間の長さから明らかでした。広がりつつある感染症の実態を3月の時点で認識し、PCR検査、無症状者や軽症者の隔離、厳しい行動制限を徹底するべきではなかったでしょうか」

感染経路を追えない感染者が急激に増えた今、今後の日本の検査体制はどうなるのか。

 専門家会議のメンバーの一人、東邦大学医学部の舘田一博教授も取材に応じた。

「これまで検査数が少なかったのは、PCRのキャパシティーが小さかったからです。今後はもちろん増やしていくわけですが、一方で、検体をとるときに医療従事者がウイルスに感染するリスクがあり、院内感染のきっかけになる可能性もあります」

 このため、PCRを増やす必要性は認めながら、舘田教授は今も対象者については慎重に考える必要があるという考えだ。

「基本的に軽い人にやってもあまり意味はないと考えています。私たちは検査数を競っているわけではありません。一番大事な目標は、死亡者をいかに減らすかということです」(舘田教授)

 日本の死者数は16日正午現在で136人だ。米国やイタリアで2万人を超え、スペイン、フランス、英国も1万人以上が亡くなっているといった状況とは異なっているようだ。

 ただし、前出の渋谷教授は「東京は手遅れに近い」とも指摘している。PCR検査の未実施が、誰も知らないうちに感染拡大の大きなリスクになっているという現状がある。(編集部・小田健司)

AERA 2020年4月27日号より抜粋