「返す言葉が見つかりませんでした。心がじくじく痛んで。でも、この痛みは忘れたくないと思いました」

 大学院を修了すると琉球朝日放送で5年働き、2017年にフリーに。翌年、元同僚で映画監督の三上智恵さんと映画「沖縄スパイ戦史」を共同で完成させた。本書は、「映画では伝えきれなかったことを書き記した」と話す。

 75年前の国家による住民犠牲の構造は、地下水脈のごとく現在に続いていると、力を込める。

「今、沖縄は島全体が軍事基地化されています。有事の際、軍は国民を守らず利用するだけ。戦争マラリアはまだ終わっていません。終わっていないどころかまた起ころうとしている。終わらせることができるのは、過去から国家や軍隊の本質を学び、戦争の芽に気づき、行動することによってです」

 刺すような言葉が胸に響く。(編集部・野村昌二)

■HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの新井見枝香さんオススメの一冊
『エフォートレス・マスタリー あなたの内なる音楽を解放する』は、心の平静と表現する喜びを求める人びとに捧げる物語。Pebbles Books久禮亮太さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 ジャズミュージシャンたちに読み継がれてきた名著がついに邦訳された。本書は音楽家のみならず、心の平静と表現する喜びを求めるすべての人びとに役立つ実践の書だ。

 どんな演奏者も初めから達人であり、内面に至高の音楽を持っていると、本書は前置きする。しかし自身のエゴ、すなわち憧れや目標、焦りや恐れといった自意識の壁が「内なる美」に触れることを阻み、ぎこちなさを生む。私たちが技術を練習するのは、自分の実力以上の演奏をするためではなく、「手と腕に、私が介入しなくても自ら道を見つけるように」させるためだと説く。鍛錬を通して身体の声を聴くことは、肥大化した自意識を鎮め、高い集中力をもたらしてくれる。

 バーチャルな情報の奔流で溺れそうに感じたとき、本書が「穏やかで小さな内なる声」の助け方を教えてくれる。

AERA 2020年4月20日号