元ヘルパーの映画監督が問う「自立とは何か」 障害者と介助者の関係描く

2020/03/03 11:30

「どんだけこの目の奥を読もうとしているか。この笑顔の裏に何があるんかなあって」

 細かいサイン、ささやかな変化。介助者は支配や共依存といった関係性の罠を細心の注意を払って回避しながら、目の前の障害者に関わっていく。介助者の自問自答は、スクリーンのこちら側の観客にも刺さってくる。

 自力で日常生活を送ることができる「身辺的自立」と、自力で生計を立てることができる「経済的自立」。それが自立なのか──?

「そういうことが自立とされている価値観を揺さぶりたい。健常者のあなたは本当に自立しているのかが問われると思います」(田中監督)

 一人でできることは限られている。どうやって人を巻き込み、関係を作っていきながら生きていくか。

「そうせざるを得なくてやっている障害当事者の自立運動が、孤立が蔓延している今、すべての人にとってひとつの先進事例になると思います」(田中監督)

 交通事故、病気などで人はいつ障害を抱えるかわからない。すべての人が当事者である物語だ。

◎「インディペンデントリビング」
プロデューサーは「ヒバクシャ-世界の終わりに」の監督、鎌仲ひとみ。3月14日から全国順次公開

■もう1本おすすめDVD「さようならCP」

「さようならCP」(1972年)は、かつて同居したウーマンリブの活動家の生き方と自力出産までを撮った「極私的エロス 恋歌1974」(74年)、天皇の戦争責任を追及する元日本兵・奥崎謙三を追った「ゆきゆきて、神軍」(87年)、作家・井上光晴の虚実入り交じった人生を描いた「全身小説家」(94年)など、衝撃作ばかりを世に問うてきたドキュメンタリー映画監督、原一男監督の第1作だ。

 養護学校で介助職員として働きながら撮った子どもたちの写真の個展がきっかけとなって映像の世界へ入ったという監督は、脳性まひの当事者と出会い、カメラを回し始める。「障害者だからといって自ら片隅でこっそりする生き方は、障害者差別を容認することになる」と考えた当事者たちは、積極的に撮影を受け入れていく。

 街頭でビラ配りをしたり、大勢の通行人の前で詩を朗読したりと、社会の真ん中へ出て行く彼らを監督は手持ちカメラで追っていく。言葉が聞き取りづらい部分もあるが、表面的なところでわかってほしくないと考え、あえて字幕はいれなかったという。

 監督の思いは特典映像の対談で聞くことができる。

◎「さようならCP」
発売元:ディメンション
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
価格3800円+税/DVD発売中

(編集部・小柳暁子)

AERA 2020年3月2日号

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