マケニ村の診療所は3月末に開設予定だ。

 いま、日本の医学部が変わりつつある。そのカギとなるのが国際化だ。Y‐SAPIX東大館の奥村直生館長はこう話す。

「他学部に比べて、国内志向で内向きの印象のあった医学部ですが、ここへきて各大学が急速にグローバル化を進めています」

 英語教育を充実させ、留学制度を設ける医学部が増えた。いまやグローバル化は、医学部志望者にとって大学選びの指標のひとつになっている。

「本塾出身の医学生に話を聞くと、大学で一番大変なのは英語だと言います。カルテや論文も英語が基本です。これからの医師には、高い英語のスキルが求められることになるでしょう」

 背景には、医療現場自体のグローバル化がある。海外の富裕層をターゲットにした、医療のインバウンドニーズが拡大しているのだ。日本の最先端医療を受けるため、アジア、中東、ロシアなどから来日する観光客が急増し、受け入れ体制を整える病院が増加した。がんなど難治疾患だけではなく、不妊治療や人間ドックの需要も大きい。

 さらに、厚生労働省などの後押しにより、医療の発展途上国に対し、医師や看護師、医療機器、医療システムをパッケージで提供するアウトバウンドのニーズも増えているという。

 医学部がグローバル化を進める理由はもうひとつ、「2023年問題」だ。23年から、アメリカで医師免許を取得する条件が厳しくなる。10年、米国医師国家試験受験資格審査NGO団体(ECFMG)が、「23年から国際基準の認定を受けた医学校の出身者以外、申請資格を認めない」と通告したのだ。

 前出の奥村館長は言う。

「影響はアメリカでの医師免許に留まりません。認定を受けていない大学は国際基準の医学教育が行われていないと見なされ、留学生に振り向いてもらえない。海外で活躍する医師を育成することも難しくなるでしょう」

 認定基準としてクリアしなければならない項目に、5~6年次に行われる臨床実習数がある。日本では通算50週程度が従来の基準だったが、認定基準では72週。実習の中身も、従来のように指導医の診療を見て学ぶ「見学型」から、チームの一員として患者を受け持つ「実践型」へとシフトする。

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