中谷:リミはとても欲望に忠実で、自ら責任を持って切り開いていくというキャラクターです。ただ私にはリミほどのガッツもなければパーティー好きでもないので、そこはだいぶ違います(笑)。その一方で、とても共感できたリミのセリフがありました。「男性を通じてしか社会と繋がれない女性にはならないでください」というセリフです。これがとても好きでした。私自身はこれまでそういう気持ちで生きてきました。自分自身の老後の面倒も自分でみるつもりで、経済的にも精神的にも自立していたいと思います。伴侶がいるとかいないとかは全く関係なく、伴侶がいようがいまいが、自分のお尻は自分で拭うつもりです。

 とは言え、私はそれが全ての女性に当てはまるとは思いません。やはり家庭をも大切にしたいと思っている女性はいらっしゃると思うので。とりわけ日本においては、専業主婦になりたい方が多いと聞きますから。あくまでも自分の考え方で、人に強要するつもりは全くありません。

 中谷さん自身の経験が本作で生きたことはあるのか。

中谷:俳優は人を観察することが仕事でもあります。人の心を演じるというのはやはり、人の人生の観察から始まりますので。例えば、カウンターに座って一人で食事をしている時など、お隣のカップルの話を盗み聞きするような、本当にひどい趣味を持っているんです(笑)。でも、そういう話を聞きながら想像を膨らませて職業を当ててみる。そんなことをしているものですから、今回はカメラという道具を与えていただいたことで堂々と人の観察ができる、幸せな体験をさせていただきました。

 中谷さんは1993年に俳優デビュー。「リング」シリーズや「ケイゾク」「電車男」「嫌われ松子の一生」など多くのヒット作に出演してきた。リミと同様、着実にキャリアを重ねてきたかのように見えるのだが、「そもそもこの職業をここまで続けるとは思っていませんでした」と告白する。

中谷:辞めるタイミングを逸してしまったと言いますか、いまだにダラダラと続けているというのが正直なところです(笑)。仕事を続けてこられたのは、私は大変移り気なタチですので、同じ仕事を繰り返すことができないからですね。例えば、公務員として毎日同じ勤務地に通うですとか、職人さんとして同じモノを手仕事で紡ぎ出すという真っ当なことは、残念ながらできそうにありません。そういう意味で、俳優は、移り気な私に最も合っている職業だと思います。この職業を通じて、ありとあらゆる職業に触れられ、ありとあらゆる方にお目にかかることができます。

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