共通テストの国語の問題作成委員の関与が疑われている記述式の例題集 (c)朝日新聞社
共通テストの国語の問題作成委員の関与が疑われている記述式の例題集 (c)朝日新聞社
大学入試センター内には、作問関係者以外は立ち入れないエリアがあり、機密保持を徹底している。試験作成に携わっている委員の名前も非公表。問題作成に関わった試験が実施された翌年度に初めて、委員の名前が明らかになる(撮影/写真部・掛祥葉子)
大学入試センター内には、作問関係者以外は立ち入れないエリアがあり、機密保持を徹底している。試験作成に携わっている委員の名前も非公表。問題作成に関わった試験が実施された翌年度に初めて、委員の名前が明らかになる(撮影/写真部・掛祥葉子)

 昨年、「英語民間試験」と「国語・数学の記述式問題」の導入が土壇場になって見送りになるという、前代未聞の展開を見せた大学入学共通テストに新たな激震が走った。国語の複数の問題作成委員が、導入予定だった記述式の例題集の出版に関わっていた疑いが出てきたのだ。本の内容はどのようなものなのか。実際に手に取ると、共通テストの目玉の一つである「実用的な文章」についての解説も含まれていた。

【写真】大学入試センター外観

 2月16日の夜のことだった。高校2年の息子を持つ女性(45)はネットニュースを見て、目を疑った。「入学共通テスト、問題作成委員らが例題集を出版 『疑念持たれる』と指摘受け複数辞任」。

 来年1月実施の大学入学共通テストについて、国語の問題を作成する分科会の複数の委員が、昨年8月、導入予定だった記述式の例題集を出版し、利益相反などの疑念を指摘され委員を辞任していたと報じていた。女性は言う。

「共通テストはこれまでも、記述式の採点業務をはじめ、利益相反疑惑のオンパレード。『またか』という思いと、『こんな人たちまで』という衝撃が強かった。これまでの利益相反は民間事業者がらみのものでしたが、今回は『人』。しかも作問者です。もし本当なら、受験生の親として許せないです」

 女性が目にした記事は、産経新聞の報道だった。これを受けて17日、大学入試センターは報道陣の取材に答えた。試験は大学教員の協力を得て作成しており、国語については20~30人が手がけていること。作問には2年間従事し、その間、試験内容に関することはもとより、試験作成に携わっていることも口外しないことが義務づけられていることを明らかにした。

 加えて、複数の国語の問題作成委員が昨年10月に辞任を申し出、今年1月に受理したが、辞任理由と例題集との関連性については「問題作成委員の特定につながりかねないため答えられない」とした。このため問題作成委員が実際に例題集の作成に関わったのかどうかは藪の中だ。

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