国語の新学習指導要領は「実用文重視で、文学を軽視している」と文学界も巻き込んだ論争が起きている。共通テストと新指導要領の国語について問題提起をしてきた、日本大学の紅野(こうの)謙介教授は次のように言う。

「関与が事実だとするなら、新指導要領を作ったメンバーが、新入試である共通テストの作問もし、さらにその対策本も出すという3点セットになる」

 今回の教育改革全般に通ずるが、共通テストも新学習指導要領も、理念ばかりが先走り、具現化が難しい。このため限られたメンバーしか作問も対策プランも作れないという、構造的な欠陥が今回の事態を招きもしたと、紅野教授は指摘する。

 共通テストの国語は、実用文の活用と、複数のテキストを読み合わせた問題形式が目玉だ。しかし、その作問は複雑で、作成委員の負担の重さを指摘する声も上がっていた。

「作問にからんでなのか、大学入試センターの中で何か尋常でないことが起きていると想像されます。今回の内部状況の情報漏洩(ろうえい)は、そのひずみの表れではないでしょうか」(紅野教授)

 萩生田光一文科大臣は会見で「守秘義務違反は生じていない」と述べた。しかし、問題作成に関わったかもしれない人たちの名前が例題集を通じて間接的に流出しており、大学入試センターが最も守りたかったものが表に出たことは深刻だ。

 さらに共通テストについては、国語の実用文を筆頭に「新指導要領を先取りしているのではないか」「なぜ新指導要領で学んだ生徒たちが受験期となる24年度からでなく、20年度実施にこだわるのか。実施時期は適正なのか」といった疑問の声がかねて上がっていた。

 大学入試センターは2月のAERAの取材に対し、新指導要領の先取りを否定した。しかし、例題集のなかには次のような記述がある。

「共通テストは二〇二〇年度から始まりますが、新教育課程施行に伴う共通テストの第一回は二〇二四年度から、ということになります。それまでは現行課程に基づく実施ですが、新科目とりわけ『現代の国語』や『論理国語』の内容が試行調査の記述式問題には一部先取りされているように思います。また、マーク式問題でも、複数の文章を比較したり、学習や言語活動の場面が取り入れられたりと、新学習指導要領との関連が見られます」

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