新指導要領に関わった人物がこう書いているのだ。こうした姿勢で共通テストの作問にも携わっていたとしたら、問題ではないか。

 例題集を出した出版社は、執筆者が入試問題の作成に携わっていることを知って依頼したのか。版元の教育出版を取材すると、次のような回答があった。

「入試の問題作成にどなたが関わっているのかは知りようがないし、知らなかった。今も確かめようがなく、どう対処したらいいのか困惑している」

 一方、大学入試センターはこれまで「問題作成委員が入試に関する出版をしてはいけない」ことを明文化してこなかった。慣行として守られてきたからだ。

「作問には約600人の大学教員の方々が携わっており、皆さん本業を持ち、論文を書いたり講演をしたりしている。作問に携わる2年の間、そうした活動を制約することは難しいが、今後の対策を検討しています」(大学入試センター)

 大学入試センターを取材で訪ねると、作問関係者以外は立ち入れないエリアがある。その手前には大量のロッカーがあり、関係者でも限られたものしか持ち込めないほど、機密保持を徹底している。センター試験は公平・公正を30年間追求し、信頼を築いてきた。共通テストもその礎の上になくてはならない。度重なる利益相反疑惑が同根であるなら、今こそ断ち切らなければいけない。(文/編集部 石田かおる)

AERA 2020年3月2日号に加筆