「和歌山県の感染例は、『院内感染は考えにくい』とされていますが、直接診療をしていなくても、ほかの医療者や患者を介して感染した可能性はあります」

 沖縄県のタクシー運転手がダイヤモンド・プリンセス号の乗客を乗せていたことを考えると、「新型ウイルスはすでに国内で広まっている」という。

「このままでは日本が第二の感染国になってもおかしくありません。国内感染が始まっていると認め、対応していかなければいけません」

 だが、過度に恐れたり、パニックに陥ったりする必要はない。日本感染症学会の舘田一博理事長は、こう指摘する。

「医師や看護師が感染し重症化して亡くなったSARSと比較すると、今回は健康な人が亡くなるようなことは現時点で起きていません。SARSと比較して病原性が弱いと考えるのが妥当でしょう」

 現在、考えられる新型ウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染の二つだという。一部には、乾いた唾液に残ったウイルスが空気中を漂い、鼻や口を通して体内に入る「エアロゾル感染」を懸念する声もあるが、舘田理事長は否定する。

「現時点で言えることは飛沫、接触感染のみ。空気感染を起こしているとも考えにくいです」

 仮に本格的な流行が始まったとき、どう行動すればよいか。予防として最も有効なのは手洗いだと前出の濱田教授は言う。

「外出から帰ってきた後、人混みに入った後、職場についた後、食事の前、といったタイミングで20秒くらいは洗ってほしい」

 先述した13日夜に亡くなった80代女性が国内では初の死亡者となる。前出の山本医師は言う。

「高齢者は持病がある人も多く、感染すれば重症化もしやすい。ワクチンが開発されるまで、できる限りの予防をしてほしい」

 手の甲、指の間、爪先まで──。子どもの頃に教わった手洗いの基本が、身を守ることにつながる。(編集部・福井しほ、小田健司)

AERA 2020年2月24日号より抜粋

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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