“寝たきり芸人”に「笑ってもいいのか」の声 パラリンピックを機に問われる障害者への理解 (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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“寝たきり芸人”に「笑ってもいいのか」の声 パラリンピックを機に問われる障害者への理解

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井上有紀子AERA
「障害者だって根性がねじ曲がった人は多いですからね」と笑うあそどっぐさん。月に一度、福岡市で開かれるお笑いライブの舞台に立つ(撮影/井上有紀子)

「障害者だって根性がねじ曲がった人は多いですからね」と笑うあそどっぐさん。月に一度、福岡市で開かれるお笑いライブの舞台に立つ(撮影/井上有紀子)

「当時、私の存在が障害者との出会いだった一般の人は多かったのではないでしょうか。結果、あの本で障害者を知った気にさせてしまった。本来、『元気な乙武くん』というイメージを障害者一般に当てはめることには無理があるはずなのに」

 乙武さんはこう続ける。

「五輪のアスリートが活躍するからといって、健常者が選手のイメージを押し付けられることはない。なぜ障害者だけイメージを持たれるのかというと、いろいろな障害者がいると知られていないからだと思います。障害の先にある生きづらさといった社会の課題を解決することに、必ずしもつながっていないのではないでしょうか」

 いろいろな障害者がいる、という乙武さんの言葉を体現するのが、熊本県で活動するお笑い芸人のあそどっぐさん(41)だ。脊髄性筋萎縮症で、動かせるのは顔と左手の親指だけ。「世界初の寝たきり芸人」を自称する。売りにしているのは、「できないこと」だ。

 ユーチューブにアップされた「スポーツテストやってみた!」という動画では、「勉強はダメだけど、運動神経だけは自信があるんです」と自信満々に宣言。握力測定器に左手を添え、うなりながら握るが、記録は0.0キロ。反復横跳びは「シュッシュッ」と体が跳ねるような音を口に出すが、目線と表情筋を左右に動かすだけで0回。50メートル走では、遠く離れたカメラに「パス」と叫んだ。ボール投げでは手の間に置かれた球をつかめず、腹筋は0回、長座体前屈はマイナス30度だった。

「動画を上げたばかりの頃は気持ち悪いと言われることが多かったが、少しずつなくなってきたのかなと思う」

 高校時代、筋ジストロフィーの同級生とコンビ「さみぃ~ず」を組んだのが始まり。その後、株のデイトレーダーに転身したが、10年前、動画で配信しようと芸人活動を再開した。

 動画のコメント欄には、視聴者から「笑ってもいいのか」と躊躇する声が寄せられる。前出の渡さんはこう話す。

「テストが健常者基準で組み立てられていることをちゃかす趣旨の動画であり、笑っていいと思います。笑うことに戸惑うのは、障害者や障害に触れてはならないとするタブーのような意識が存在するからでしょう。視聴者がそれに気づくことは非常に大事です」

 パラリンピックもお笑い動画も、障害者をよりよく知る手段の一つなのだ。(ライター・井上有紀子)

※AERA 2020年2月17日号より抜粋


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