吉野:特に母親との共振性が高い女の子の場合、お母さんの気持ちがものすごく子どもに伝わるんです。だからお母さんはお芝居でもいいから、平静でいてほしい。それが、まず親ができることです。一番いいのは、抱きしめてやることですね。体温を伝える。鼓動を伝える。そうやって「私はあなたのそばにいつもいるよ。味方だからね」という気持ちを、お子さんに伝えるのがすごく大事だと思います。

──逆に、こういう態度はとってはいけないというのはありますか。

柳沢:その子の持っている能力や存在価値が傷ついたわけではないですからね。あくまでも競争の中での「1回の出来事」でしかない。それなのに落ちた子の前で号泣する親御さんもいるからね……。

吉野:本当に困ります。親は自分が悲しむのではなく、子どもの気持ちに共感する役割を担わなくてはなりません。特に女の子にとっては「横の関係性」がすごく大事なので、親子という「縦の関係性」で慰めてもらうよりも、「そうだよね」という感覚を一緒に共有してもらえるほうが心が落ち着きます。共感といっても難しいことはありません。子どもが「つらい」と言ったら、「つらいよね」と言葉を鸚鵡(おうむ)返しにして、「そうだよね」と言ってあげればいいのです。一緒になって気持ちを分かち合う場を持つことが必要なんです。また、子どもの受験なのに、「自分がやってきたことが報われなかった」という感覚を持つ親御さんもいます。第1志望ではなく、併願した学校にお子さんが通うことになり、「こんな学校にしか受からなかった」という気持ちを親が持っていると、それを感じ取って子どもはずっとモヤモヤを抱え続けることになる。

柳沢:例えば併願校含めて、二つ三つ受けるとしたら、どこに行ってもいいんですよ。大切なのは「入った学校に早く馴染めるかどうか」。経験上、入学試験の成績と卒業時の成績には、あまり関係がありませんから。

吉野:確かにそうですね。

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