「若く勉強しなければならない医師が無給のためにアルバイトに明け暮れる。質の高い論文が出せないなら、今後、新たな治療法は生まれません」(上医師)

 科学技術振興機構によると、15年の生命科学分野で引用回数の多い論文のシェアから日本の影響力を調べたところ、先進6カ国の中で最下位になった。

「大学病院の医師が医局に縛られ、労働者として認められないのは日本だけ。米国では研究者と臨床診療者は分業で、研究者が一般患者を診察することはありません。優秀な医師は、技術や労働環境の整った海外に渡っていく」(同)

 研究分野を志しながら、無報酬で仕事に追われる医師たち──。このままでは、「日本からノーベル医学生理学賞が出なくなる日」が訪れるのは遠くない。(ライター・井上有紀子)

AERA 2020年1月27日号より抜粋