着想は実際の事件から? 中国人技能実習生の視点から描く、リアルな人間ドラマ

2020/01/25 17:00

「言い方を変えると、この作品は僕のなかではロードムービーなんです」と近浦監督は言う。

「人が動いて、事態が動いて、感情も動く。移動していくなかで、新しい出会いがあり、自分自身が変わっていく」

 じつは近浦監督は、映画の制作資金などをつくるために、ウェブ開発を行う会社を立ち上げた、という経歴の持ち主。韓国の巨匠、イ・チャンドンを始めとする、監督たちに大きな影響を受けてきた。

「自分の好きな監督、好きな作品を一カット、一カット絵コンテに起こしていくこと。それとは別に、登場人物がなにをしてどうなる、というシーンリストをつくっていくこと。それが、僕にとっての映画の勉強でした」

 大学生の頃から独自の方法で映画を学び、絵コンテに起こした作品は100を優に超えるという。今後はどんなスタンスで映画を撮るのか。

「商業映画の監督としての技量はいまの時点で持っているとは思っていなくて。“映画作家”になりたい、と思っています」

◎「コンプリシティ/優しい共犯」
劣悪な環境から逃げ出した中国人技能実習生チェン・リャンは、他人になりすまし生きていく。公開中

■もう1本おすすめDVD「クスクス粒の秘密」

「コンプリシティ/優しい共犯」は、トロント国際映画祭、ベルリン国際映画祭といった世界的な映画祭に正式出品された。実際に現地を訪れるなかで、近浦監督が印象に残っている観客の言葉がある。一つは、「日本でもこういう問題ってあるの?」という社会的な背景に対する驚きの声。もう一つは、「移民の私が観たときに、ものすごくコネクトすることができた」という言葉。とくにベルリン国際映画祭で上映された際は、近浦監督のインスタグラムにこうしたメッセージが多く届いたという。

 その話を聞き、まず思い浮かべたのが「アデル、ブルーは熱い色」などで知られるアブデラティフ・ケシシュ監督の「クスクス粒の秘密」(2007年)。

 南仏の港町セートで船の修理工として働くチュニジア系移民のスリマーヌは、リストラの波が押し寄せてきたことを機に、故郷の味であるクスクス料理専門店を開くべく奮闘する。だが、温厚で真面目なスリマーヌを世の不条理が襲う──。

 観終わってもなかなか立ち上がることのできないラスト。日本では劇場公開されていない作品だが、DVDで体感してほしい。

◎「クスクス粒の秘密」
発売元:オンリー・ハーツ 販売元:グラッソ
価格4800円+税/DVD発売中

(文/古谷ゆう子)

AERA 2020年1月27日号

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