「4技能のバランスの取れた指導をより一層充実させるとともに、小・中学校において身につけた英語によるコミュニケーション能力を高等学校において更に向上させるため、小中高一貫した英語教育を進めていく必要があります」

「話す力」の必要性は多くの教育関係者が認めるところだ。だが、スピーキングテストを巡っては教育現場から不安や反対の声が上がっている。大学入試改革と同様、現場の納得が得られないまま物事が進められている状態だ。

 現場の教師たちが懸念することの一つは、スピーキングテストで「話す力」がつくのか、という問題だ。都立中学の英語教員(40代)はこう述べる。

「いま中学の英語の現場では、スピーキングは『間違ってもいいから大事なのは話そうとする気持ち』と生徒たちに説明しています。しかし、スピーキングテストによって、生徒は間違ってはいけないというプレッシャーの中で話すことになる」

 プレテスト問題や判断基準はまだ公開されていないが、例えば、三単現の「s」がついていないなど、実際の会話では最重要とはいえないことまでスピーキングテストでは求められるのではないか。それでは受験に勝つための話す力はつくかもしれないが、本当の話す力はつかないのではないか、と言う。

 都立高校の英語教員(45)もスピーキングテストは「大反対」としてこう言う。

「中3レベルでのスピーキングテストでは、挨拶(あいさつ)や自己紹介、趣味など標準的な内容しかつくれないでしょう。そうすると、事前に覚えたフレーズでほぼ対応できてしまうのではないか」

 もう一つは、公教育での民間の活用への疑問だ。都は今年度から当面5年間、ベネッセと協定を結んだ。協定は「公募」で決めたという。

「私立高校の入試ならいざ知らず、公立学校の入試で採点を民間の外部機関に委ねるというのはおかしい」

 と疑問を呈するのは、福井県の男性高校教員(60)だ。

 福井では、14年に都立高入試で大量の採点ミスが見つかったことなどを受け、以前にもまして厳正な入試業務・採点が求められるようになった。管理職から絶対にミスは許されないと厳命され、準備から終了まで大変気の張る仕事だという。

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