読者としては自分よりも年上の作家の「小説ではなく、ノンフィクションやエッセー」をよく読む。石井桃子や「ムーミン」のトーベ・ヤンソン、俳優・沢村貞子、作家・佐野洋子の名前が挙がった。

 小林さんの趣味、俳句の話題も本には出てくる。

「大好きな落語家の柳家小三治さんの『東京やなぎ句会』の存在を知って、楽しそうだなあ、と声をかけた友達と月に1回、集まっています。なんと来年(20年)、100回目を迎えるんです。先生はいなくて、それぞれが研鑽して、遊びましょう──と。俳句は知れば知るほど奥が深く、ゴールがないのが楽しいですね」

 とのエピソードから始まる本書は、最後も愛猫が登場して終わる。「何げない日常」に隠れている小さな光を集めたようなエッセー集だ。(ライター・矢内裕子)

■八重洲ブックセンター川原敏治さんのオススメの一冊

『データの世紀』は、デジタル化にともなう、データの収集や利用について考えさせられる一冊。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 デジタル環境の拡大にともない、集められた膨大なデータが、世界を動かしている。本書は、そんな「データエコノミー」の時代をさまざまな切り口で紹介していく。

 何げなく日常で使用しているネットでのやり取りから集められたデータ。そこからは個人の特定、格付け、さらには個人に関するデータ売買など、データエコノミーが急速に普及した「負」の側面の事例が多く挙げられ、読み進めるにつれ不安は増す。

 とはいえ、デジタル化されたサービスを利用せずに生活することはもはや不可能な時代だ。それを否定してしまえば、銀行利用や買い物すらできなくなるのかもしれない。

 デジタル化にともなう、データの収集、利用の部分に目を向け、法整備なども当然だが、各々が自覚し、管理しなくてはいけない時代に来ていることを考えさせられる一冊。

AERA 2019年12月30日号-2020年1月6日合併号