即位のパレードでは、沿道の歓声を受けて涙ぐむ雅子さまの姿が見られた/11月10日、東京都千代田区で (c)朝日新聞社 (c)朝日新聞社
即位のパレードでは、沿道の歓声を受けて涙ぐむ雅子さまの姿が見られた/11月10日、東京都千代田区で (c)朝日新聞社 (c)朝日新聞社
天皇陛下と雅子さまが目を合わせて談笑する姿から、和気あいあいとした雰囲気が伝わってきた/12月3日、東京・赤坂御所で(写真:宮内庁提供)
天皇陛下と雅子さまが目を合わせて談笑する姿から、和気あいあいとした雰囲気が伝わってきた/12月3日、東京・赤坂御所で(写真:宮内庁提供)

 皇后雅子さまの誕生日に公表された文書には、雅子さまらしさが浮かぶキーワードがあった。そこから見えた、これまでの道程と現在の思いとは。文書から見えた雅子さま素顔についてつづったAERA 2019年12月23日号の記事を紹介する。

【写真】天皇陛下と雅子さまが目を合わせて談笑する姿

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 皇后雅子さまが12月9日、56歳の誕生日を迎え、「感想」を文書で公表した。皇后になって初めての文書。そこで何度も語られていたのは、周囲への「感謝」の思いだった。

 40字詰めで80行にわたる文章に「感謝」という言葉を6回、「御礼」という言葉が2回。上皇ご夫妻、陛下(59)、愛子さま(18)、そして国民への気持ちを述べていた。皇太子妃として最後となった昨年の誕生日の文書でも「感謝」が5回、「お礼」が2回使われていたから、大切にしている気持ちなのだとわかる。

 もう一つ皇太子妃時代から変わらないのが、自分のことはごく抑制的に語るという姿勢だ。雅子さまの文書に接するたび、生真面目な女子高生の姿が頭に浮かぶ。スカートも靴下も校則通りにはく。長かったり短かったりというような、はみ出すことは決してしない。たぶん雅子さまは、具体的エピソードを明かすことは、はみ出すことだと感じているのだろう。今回の文書でも雅子さまは、あくまでも真面目で優等生だ。

 上皇后美智子さま(85)は、具体的な場面を紹介しエピソードを語ることが多かった。その時の光景が手に取るようにわかり、美智子さまの素顔のようなものが感じられた。雅子さまの文書からも、体温がもう少し伝わってきたらいいのに。そんなふうに感じないこともない。

 とは言え、素顔が全く見えないかと言えば、そうでもない。ごく抑制的な表現の中から、静かに「雅子さまらしさ」が浮かび上がる。そういうキーワードが、何かしら見つかるのが雅子さまの文章だ。

 昨年の文書では「研鑽(けんさん)」という言葉がそうだった。代替わり目前、皇太子妃として最後の誕生日にあたり「この先の日々に思いを馳せ」て、このように述べていた。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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