努力をし、結果を出してきた人なのだから、もちろん「強さ」がないはずはない。だが、雅子さまの「強さ」は「図太さ」とセットのそれではなく、「繊細さ」と共にあるものなのだろう。そのことの表れの一つが「控えめな人」という証言。そのことをやっと実感した。
そうなると、皇室に入って以来の雅子さまの苦労がますます胸に迫ってくる。
外交官という職を中断し入った世界で求められたのは、何よりも「男子出産」だった。努力だけでは結果の出ないミッションに、さぞ戸惑ったことだろう。図太さがあれば開き直ることもできたかもしれないが、そうでない雅子さまは「適応障害」という病を得てしまった。健康と同時に、「自信」というものも失ったことは想像に難くはない。
だが、雅子さまの負った傷はこちらの想像を超えるほどだった。その結果、雅子さまは国民との距離も遠く感じるようになっていたのだろう。そのことを「思いがけない」という言葉が表している。だからこそ先ほどの文章の続きを読むと、しみじみとした気持ちになる。
<日本国内各地で出会った沢山の笑顔は、私にとりましてかけがえのない思い出として心に残り、これからの歩みを進めていく上で、大きな支えになってくれるものと思います>
(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2019年12月23日号より抜粋