「E.T.」や「未知との遭遇」……。作中には、SF映画の名シーンも多く登場する。

「初めてSF映画を観たときに感じた驚きを盛り込みたいと思った。でも、ストーリーに合わないシーンを無理に入れたりはしない。物語にフィットするかが大切なんだ」

 コマ撮り撮影は、巨大なスタジオのなかで、約40の異なるシーンを30人のアニメーターが同時進行で進めていく。

「共同監督と僕は、そのすべてを確認する。スタジオ内を1日10キロ歩いた日もある。思った通りにいかない!と頭を抱えることも、もちろんあったけれどね(笑)」

 そうして生まれたキャラクターの動き一つ一つを見て、観客は想像力を働かせ、その心の内を知りたいと願う。

「ショーンたちのことを“人間”のように見てくれる。それが多くの人に受け入れられた理由なのかな」

◎「映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!」
ある夜、林のなかに光り輝く物体が不時着する。翌日、ショーンは食べかけのピザを見つける。12月13日公開

■もう1本おすすめDVD 「アーティスト」

「映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!」を生み出すにあたり、ウィル・ベチャー監督らスタッフは多くのサイレント映画を観直しては動きを参考にしたという。たとえば、チャーリー・チャプリンやバスター・キートンといった、“喜劇王”たちの作品だ。

「ひつじのショーン」シリーズの劇場用長編第1作「映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム」(2015年)の制作にあたり、当初懸念していたのはやはりその“長さ”だった。

 だが当時、モノクロのサイレント映画「アーティスト」(11年)が世界的にヒットを記録。その様子をみて、サイレント映画でも現代の観客にきちんと受け入れられる、とポジティブに捉えるようになったという。

「アーティスト」が描くのは、サイレントからトーキーへと映画が移り変わっていくなかでの役者たちの葛藤、そして恋模様だ。私たちは登場人物たちの一つ一つの動きに目を凝らし、感情をつかみ取ろうとする。情報過多の時代に生きる私たちにとって、そのシンプルさは新鮮で、とても優雅なものに見えるのかもしれない。

◎「アーティスト」
発売・販売元:ギャガ
価格1143円+税/DVD発売中

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2019年12月16日号