豪州上空に向けてカプセルを放出するはやぶさ2のイメージ。まだ豪州政府との交渉もあり、帰還日は来年11~12月としか言えないという(写真:JAXA提供)
豪州上空に向けてカプセルを放出するはやぶさ2のイメージ。まだ豪州政府との交渉もあり、帰還日は来年11~12月としか言えないという(写真:JAXA提供)
はやぶさ2の帰路(AERA 2019年12月2日号より)
はやぶさ2の帰路(AERA 2019年12月2日号より)

 小惑星リュウグウの探査を終えた「はやぶさ2」。無事帰還すれば、初代「はやぶさ」に続く偉業だ。この小惑星探査分野では日本がリードする。AERA 2019年12月2日号では、競争から協調の時代に突入した宇宙開発で、期待される日本の技術力を紹介する。

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「Wow! はやぶさ2のチームにとっては、うれしくもありせつなくもある瞬間だ。リュウグウを離れ、地球への旅路についた。このミッションの次のチャプターでの幸運を祈る」

 11月14日、米航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「オシリス・レックス」のチームが、ツイッターでお祝いのコメントを発信した。前日の午前10時5分、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」は、約1年半にわたる小惑星「リュウグウ」での探査を完了し、地球への帰途についた。来年末には、リュウグウの砂や石が入っているとみられるカプセルを豪州辺りの地上に送り届ける計画だ。成功すれば、小惑星「イトカワ」の微粒子を地球に届けた初代「はやぶさ」に続く、史上2例目の偉業となる。

 大きな惑星の探査では、米国が長年、世界を率いてきた。地球の衛星である月から人類史上初の天体サンプルを持ち帰ったのも米国だ。ただ、月は度重なる隕石の衝突などで変成し、太陽系が生まれたとされる46億年前の物質について正確に知ることが難しい。組成の変化があまりないと考えられる小惑星の岩石は、太陽系初期の痕跡を知るタイムカプセルそのもの。そこに目をつけた日本を、小惑星探査で名実ともに一人勝ち状態とさせたのが、二つのはやぶさミッションだった。

 祝辞ツイートをしたNASAの探査機オシリス・レックスは現在、形がリュウグウにそっくりの小惑星ベンヌからサンプルを持ち帰る任務を進行中で、2023年に帰還する予定だ。米国が小惑星サンプルの採取をするのは初めてで、この分野では先輩となるはやぶさ2のチームとも連携し、持ち帰ったサンプルを相互提供しあうことにもなっている。

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