「ジム(キャメロン)はとても有能で映画の中のジョン・コナー(1、2作目に登場した人類のリーダー)のようにひとりで何でもできてしまう。僕は彼のように優秀ではないから、たくさんの人と力を合わせて作品を創り上げたのです。映画の中でみんなをまとめて、協力し合う関係を築いていくダニーに近いかもしれない。複数の人たちの力を集めて強さを発揮できるのは人間の強みですから」(同)

 ダニーはこの作品で重要な役割を担うキャラクターだが、メキシコシティの自動車工場で働く21歳の女性、いわゆる一般市民だ。訳がわからずターミネーターに追いかけられ、苦難を乗り越え、仲間と出会い、たくましいヒロインに成長する。

「自分は涙もろくて、完成した映画を観て二つの場面で泣いてしまった。自己犠牲を余儀なくされ、ギリギリのところでがんばって力を発揮するヒーローやヒロインにぐっとくるんです」(同)

◎「ターミネーター:ニュー・フェイト」
製作は「タイタニック」のジェームズ・キャメロン

■もう1本おすすめDVD 「デッドプール」

「ヒーローを描くのが好き」と話すティム・ミラー監督の「デッドプール」(2016年)。マーベルコミックの同名スーパーヒーローが原作だが、「ターミネーター:ニュー・フェイト」とともに型破りなヒーローが登場する。

 主人公ウェイドはアンダーグラウンドの特殊部隊で、トラブル解決の請負人をしている。暴力もいとわず、ああ言えばこう言う減らず口。そのような彼を理解してくれる恋人が現れ、心躍る日々を過ごすが、末期がんを告げられてしまう。

「どんな背景があろうともヒーローになれる」と話すミラー監督が描くのはここでも自己犠牲をはかり、極限まで押しやられて生きる方法を見つける人間らしいヒーローだ。

 ウェイドは無責任で、善悪の概念もないが、あきらめなかった。それゆえヒーローになれたのだ。

 ヒーローがくぐり抜けるギリギリの状況は、過激なアクション場面によって描かれる。「ターミネーター:ニュー・フェイト」でも、監督自らアクションのシナリオを書いたという。

「CGと実際のアクションで何でもできる。どこまでやるかが問題なんだ」

◎「デッドプール」
発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
価格1419円+税/DVD発売中

(ライター・斉藤真紀子)

AERA 2019年11月25日号