コービン氏は、草の根の党員票に支持基盤を持ち、鉄道の再国有化などを掲げる党内の急進左派だ。かつて労組依存から中道左派へとかじを切って支持を広げ政権を維持したブレア元首相らの「ニュー・レーバー(新しい労働党)」路線には批判的な立場を取る。富裕層を批判し、貧富の格差解消を訴えるためにはポピュリスト的な手法も辞さない。

 9月の党大会では、イートン校などのパブリック・スクールを含む私立校(小中高レベル)の全廃を掲げ、補助金や税制面での優遇の廃止、私立校が持つ資産の再分配などを打ち出した。

 6日には、コービン氏と路線対立のあった中道穏健派のトム・ワトソン副党首が「個人的な理由」から不出馬を表明。英メディアは、ワトソン氏が友人らに「労働党は、もはや自分が入党した政党ではない」と語ったなどと報じた。最大野党の党首は「次の首相」候補だが、世論調査では、コービン氏の首相としての資質について、「ある」が20%前後なのに対し、「ない」が6割から7割に達する。産業界などからは、「ブレグジット(EU離脱)よりコービン政権誕生の方がよほど怖い」との声も漏れる。(朝日新聞東京本社編集局長補佐(前ヨーロッパ総局長)・石合力)

AERA 2019年11月18日号より抜粋