大村入国管理センターの居室。右奥が廊下への出入り口。左奥はトイレ/2019年7月11日、長崎県大村市で (c)朝日新聞社
大村入国管理センターの居室。右奥が廊下への出入り口。左奥はトイレ/2019年7月11日、長崎県大村市で (c)朝日新聞社

 大村入国管理センターで一時的に外に出られる「仮放免」を求めてハンストを行っていた外国人男性が餓死した。背景に何があったのか。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。

*  *  *

 自分を傷つけることで「仮放免」を勝ち取ろうとしている。入管庁によれば、6月1日~9月25日の間に全国で延べ198人がハンガーストライキ(ハンスト)を行い、9月25日時点で36人が継続。ハンストは命の危険を伴う。とうとう、「餓死者」が出た。

 長崎県大村市の大村入国管理センター(大村入管)で6月、ハンストをしていた40代のナイジェリア人男性が死亡した問題で入管庁は10月1日、死因を「餓死」とする調査結果を公表した。入管施設収容中に餓死者が出たのは、全国で初めてだ。

 男性は00年10月に来日し、日本人女性と結婚。窃盗罪で有罪が確定して仮釈放され国外退去処分となった後、16年7月に大村入管に移送された。男性は離婚した日本人女性との間に子どもがいることから、送還を拒否。長期にわたる拘束に抗議し、5月下旬からハンストを始めた。

 大村入管は男性のハンストを把握し、6月初旬まで点滴を施していた。だがその後、男性は治療を拒否して、同月24日に死亡した。71キロあった体重は、死亡時は約47キロしかなかった。男性は過去4回、仮放免を申請していたが一度も認められなかった。なぜか。

 大村入管はこう説明する。

「仮放免を許可しなかったのは、彼は実刑判決を受けていて、現行の運用上、許可することが適当と認められなかった。強制的に治療をしなかったのは、医療倫理上、本人が治療を拒否しているのに治療を行えば、傷害や暴行罪にもなりかねず、できなかった」(総務課)

 大村入管で15年近く面会や礼拝など支援を続ける長崎インターナショナル教会の柚之原寛史(ゆのはらひろし)牧師(51)は、餓死は「非常にショッキング」だったと言う。かつて男性と面会した際、家族との面会を喜んでいた姿が忘れられない、と振り返る。

「長期収容が続く中、多くの収容者が精神的に病んでいる。同じような対応をしていれば、また亡くなる人が出てしまいます」

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら
次のページ