※写真はイメージ(gettyimages)
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 神戸の東須磨小で発覚した教員同士のいじめ。いじめ防止を指導する立場の教員が、 陰湿ないじめを行っていたことに衝撃が走った。だが、大人のいじめはどこにでも起こりうる。どう防ぎ、どう対処すればいいのか。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。

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 日本産業カウンセラー協会が2007年に行った調査では、産業カウンセラー440人のうち、約8割が「職場のいじめ」の相談を受けたことがあるという。同協会の執行理事を務める伊藤とく美さんは言う。

「現在も、職場のいじめ相談の件数は減っていません。最も多いのは、日常的な叱責や誹謗中傷、差別など、パワハラに該当するもの。次いで、無視、仲間外しなど人間関係です」

 パワハラと聞くと、立場の強い上司から部下への攻撃をイメージしがちだが、必ずしも職務権限の強い人が加害者になるわけではなく、被害者になることもあり得ると伊藤さんは語る。

「ある程度の規模の会社では、管理職は2~3年で入れ替わることも。すると新しく配属された管理職は“腰かけ”扱いされ、十数年同じ職場にいるアルバイトのほうが実質的な権力を握っていることも実際ある」

 神戸の東須磨小の事件でも、校長がいじめの主犯とされる40代女性教諭の暴挙を止められなかったことが報道されているが、職場いじめの背景にあるこうした「力関係のねじれ」が、問題解決をより困難にしている側面もあると伊藤さんは指摘する。

 では、上司や管理職を頼れない場合はどうすればいいのか。

「ともかく一人で抱え込まないことです。例えば、厚生労働省委託事業として当協会が運営している『こころの耳』というサイトでは、仕事や人間関係の悩みを電話やメールで受け付けています。働く人やその家族などを対象に無料でカウンセラーが相談に乗りますので、まずは話を聞かせてほしい」

 信頼できる外部機関に相談することで、メンタルのケアだけでなく、会社の人事部や経営者に対する交渉人や、法律関係のアドバイザーといった協力者も得やすくなる。社内に労働組合がない場合は、個人で相談・加入できる外部のユニオン(合同労組)を頼るのも手だ。

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