全くの新録作品だけではなく、過去の人気アルバムや廃盤のアナログ・レコード化が多いのもこうしたイベントの特徴のひとつ。今年のラインナップの中でいえば、今年再結成されて話題騒然のナンバーガールの代表作「DESTRUCTION BABY」(1999年)、くるりが手かげた映画「ジョゼと虎と魚たち」のサントラ(2003年)などに注目が集まっている(ナンバーガールは解散前のライヴを音源化した「LIVE ALBUM『感電の記憶』」「2002.5.19 TOUR『NUM-HEAVYMETALLIC』日比谷野外大音楽堂」も2枚組でレコード化される)。

 また、このコラムで以前に紹介した℃-want you!や折坂悠太、あるいはKIRINJIらの最新リリース作品のアナログ盤化も早々に売り切れる可能性が高い。ちなみに、折坂悠太は今年の「レコードの日」のイメージ・キャラクターとしてポスターなどのアートワークでも起用されている。

 時代の経過とともに新たに注目を集めるようになった作品の中で、特に今年のラインナップの中でファインプレー的アルバムとしては、細野晴臣や吉田美奈子らとの交流でも知られ、12年に急逝した佐藤博のファースト「SUPERMARKET」(76年)と「awakening」(82年)。また、イラストレーターである小田島らとサニーデイ・サービスなどのサポート経験もある細野しんいちによるグループ=BEST MUSICの「MUSIC FOR SUPERMARKET」(07年)などがあげられる。

 近年、AOR、シティ・ポップ、アンビエント・ミュージック、ニューエイジといった音楽に興味を持つようになった若い世代にとってはぜひ聴いておきたい魅力的な作品といえる。

 もちろん、この「レコードの日」のようなイベントに対し、懐疑的な声が聞かれないわけではない。春と秋にそれぞれ開催されるその二つの「レコードのお祭り」がなくても、普段から新品・中古問わずにレコードを買っているという人は多いし、実のところ筆者もその一人。

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操作が面倒なのにレコードが人気