トランプ大統領来日時、天皇の後ろに控えることなく、皇后が堂々と向き合う場面も見られた。そのような関係性でいこうという意思表示ではないでしょうか。日本社会の中にジェンダーギャップが依然として存在している。当然、皇后もそれを知っているわけで、皇后の立場をもっと強くしていきたいと考えたとしても不思議はないと思います。

――順調な雅子さまだが、天皇の日程に合わせ、「体調に支障がなければ、皇后陛下も同席される」と宮内庁が説明することが多い。

 今の雅子さまは、もう治療は必要ない状況だと思います。元々健康だった人が、皇室という環境に置かれたために起こしたのが「適応障害」という反応でした。その環境から異常さが取り除かれ適応度が増した今となっては、治療する余地はないし、再発可能性もないと思います。ただしこれは、私が雅子さまの治療に責任のない立場だからこそ言えることであり、精神科医というのは「もう大丈夫」とは絶対に言わないものです。

 皇后自身、長らく病名がついていた状態でしたから、体調にはまだ自信が持てないのかもしれません。だから、「体調が良ければ同席」というような注釈つきの日程発表になっているのかもしれませんね。ですが現在、きちんと日程をこなしているわけですから、この調子で自信が確かなものとなれば、注釈も不要になるのではないでしょうか。

 皇后の日程から「体調次第」という注釈が消え、天皇、皇后の日程がそれぞれ普通に発表されるようになる。それが「適応障害は治りました」という事実上の宣言の日になるのではないでしょうか。

(構成/コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2019年10月28日号より抜粋

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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